これは私の兄が経験した話。
兄は高校時代、毎週金、土、日の三日間、午後六時から九時までの三時間、中華料理のレストランでアルバイトをしていた。
バイト先までは原付バイクで通っていたのだが、兄はバイト終わり必ず立ち寄る自動販売機があった。
バイト先から自宅までの帰り道にある五台ほど並んだ自動販売機。色んなメーカーの飲み物が入っていて、兄は日替わりで色んな飲み物を飲んでは、メーカーが違うだけで同じ炭酸飲料でも全然味が違うなど、当時流行っていたブログに書いていた。
金曜日の夜、いつもの様にバイクに乗りその自動販売機へと向かって山道を走っていた兄。
「あれ?誰かいるのか?」
自動販売機の前にバイクが一台止まっているのに気がついた。
昼間は結構車やバイクが止まっている事もあるのだが、夜になるとほとんど車通りも無くなる道だったので、今までそこの自動販売機に車などが止まっている事がなかったので、珍しいな。と思いながらその止まっていた原付の少し後ろに自分のバイクを止めて自動販売機へと歩いていった。
ボォボォと改造マフラーを装着しているかの様な音を立てて止めてある原付を横目に見る。
「は?ボロボロやん」
兄はその原付を見て驚きの声を上げた。
原付のフロントのカバーはバキバキに割れていて何色のバイクだったか判別もつかないほどくすみ、金属が見えている部分はほとんどが錆に覆われライトも割れていた。
改造マフラーのように聞こえた音もただマフラーが破れ、そこから排気の音が漏れている音だった。
「よくこんなボロボロの状態で走れるな。どんな奴が乗ってるんだよ」
兄は辺りをキョロキョロと見回したが、人がいる気配は無い。バイクを止めて遊びにいっているのかもしれないがエンジンがかかったままだ。
不思議に思いながらも自動販売機で飲み物を買って飲み始めた。
こんなバイクに乗っている様な奴だ。まともな奴じゃ無いだろう。とそのバイクに背を向け自分のバイクを見ながら飲み物を味わい、最後の一口をグイッと口に押し込みゴミ箱に空き缶を入れ帰宅した。
次の日、バイトが終わりバイクに跨るとまたあの自動販売機を目指し走り出した。
グネグネとした山道を軽快に走り抜け、大きな左カーブを曲がり切ると自動販売機が見えてくる。
「ん?あれ?」
自動販売機の前にまたバイクが止まっているのが見えた。
「昨日と同じバイクじゃないか?」
速度を落としながらそのバイクの横を通り過ぎ、昨日と同じ少し後ろに自分のバイクを止めてバックミラーで確認する。
「やっぱりそうだ。もしかして捨てていったのか?」
ゆっくりバイクから降りてそのバイクに近付いていく。
「またエンジンがかかってる」
燃料の残量を見ようとメーターを覗くとメーターのパネルもバキバキに割れていてよく分からない。周りを見渡すがやはり人の気配は無い。
昨日よりもまじまじ見れたと言うのもあるが、よく見たら全体的に苔の様なものに覆われていてタイヤも前後パンクしている。後輪に関してはホイールも歪んでいる状態だ。とても乗れる状態のバイクではない。
しばらくバイクを眺めていたが、謎の恐怖感に襲われた兄はさっさと飲み物を買って帰ろうと急ぎ足で自動販売機に近付き、お金を入れようとしたその時。
並んだ自動販売機と自動販売機の間、丁度人一人が横になれば入れるくらいのスペースに何かがある事に気がついた。
「……うわぁぁぁぁぁ!」
兄は最初、自販機の間に服が詰め込まれていると思ったらしいのだが、よく見てみるとボロボロのヘルメットを被った人間の様な者が前屈した状態で自動販売機の間に挟まっていた。前屈と言うより上半身が下半身にピッタリと付くように折りたたまれているといってもいい状態で、それはモゾモゾと動きながら頭をこちらに向けてこようとしていた。
兄は自動販売機にお金を入れたことなど忘れ、一目散にバイクへ走りそのまま逃げた。























なんかみどりで腐っててゾンビみたいなんがもぞもぞって動いたの
想像してやばかった
怖ー!ここ最近読んだ中で1番怖かった