暗い部屋

ズズッ…ズ…ズズズッ….

外で何かを引きずるような音。
眠い目をこすりながら、カーテンの隙間から
外を覗くとあの家が見えました。
元々は向かいに建っていたアパートで
見えなかったんですが、
半年前に取り壊されて以来、僕の部屋の窓から
その家が見えるようになっていたんです。
夜中の暗闇を街灯の光がぼんやりと照らす
その奥で、あの家が…少しずつ…また少しと…
こちらに近づいているんです。

ズズッズズッ…ズズズッ…ズズ…

外で起きてるありえない現象に恐怖した僕は
すぐにカーテンを閉めベッドに潜り込みました。
耳を両手で覆って必死で目をつぶっても
家の近づく音は鳴り止まず、どんどん大きくなっていきます。
ガクガクとベッドの中で震えていると、不意に音が止まりました。
息をするのも忘れて、じっとしていると窓に何か当たる音がする。

「何かが窓をノックしている..」

そう思った僕はじっとしたまま、朝になるのを待ちました。
あれから何時間経ったのか、気づけば寝てしまっていたようで
時計を見ると針は朝の8時をさしていました。

昨晩の怖い体験を思い出すも、あまりにも現実離れしすぎていたのもあり
きっと悪い夢でも見たんだろうと思い忘れることにしたんです。
部屋に戻って身支度をする中で、ふと違和感を覚える。
朝なのに部屋がいつもより暗い気がするんです。
カーテンの隙間から微かに差し込む日の光を見て、

「カーテン開けてないからか？」

と思いカーテンを開ける。
不意に窓の外の光景が目に入り、言葉を失った。
悪夢だと思って忘れようとした昨晩の体験が
脳裏にフラッシュバックする。
夢なんかじゃなかった。
あれは確かに現実だった。