あの日の連絡

二次会を考えてくれていたのに申し訳ないが、今日はこれまでとさせてもらおう

俺は戻るなり、彼女に呼ばれて早く帰らないといけないから帰ると嘘を言った

セクシー女優のサイン会があるからなんて本当のことをいうのは、さすがにあれだったから

ちなみに彼女がいるのは本当だ

すると、二人は慌てたように引き留めてきた

「もうちょっといいだろ！　久しぶりに飲むんだし！　なあ？」

「そうだよ！　次行く店は本当にいい店なんだ！　おごるからさ！　な？」

最初はまだまだ話したいからだと思った
だが、あまりに必死に止めようとするからだんだん怖くなってきた

なんだ？
なんでここまで引き留めるんだ？

もしかして、何か変なビジネスにでも勧誘しようとしているのか？

久しぶりに友達と会ったら勧誘されたなんてのはよく聞く話だからな

これから行く予定のお店にそのビジネスの偉い人が待っているのかもしれない

俺はなかば強引に帰ることにした

二人はしぶしぶといったかんじで俺を見送った

「わかった。じゃあ、今度飲みなおそう。どこに住んでいるんだ？」

俺はもう変なビジネスをやっているとしか思えなかったので、嘘の住所を教えた

といってもまったくでたらめの住所じゃない
それだとすぐにバレるだろうからな

前に住んでいたマンションを教えた
上京して一発目で少し気合いれて入った、ちょっと家賃高めのオートロックのマンションだ

押しかけてきても入ることはできないからまあいいだろう

俺はそのまま電車で移動してサイン会のある最寄りの駅に向かった

その駅の近くのカプセルホテルに泊まった

朝起きてスマホを見ると電源が切れていた

しまった
充電しないままで寝てしまった