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呪い・祟り

Flounderさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

六甲降ろしのお地蔵様
長編 2025/06/12 22:37 6,399view
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私は青少年時代、自衛隊駐屯地の近くに居住していました。

学校には自衛官の子供も多く通い、ミリタリーマニアだった私にとっては内輪の話を聞ける貴重な機会でした。
もちろん、軍事的な話のほかに、オカルト的な話(旧軍兵の幽霊集団や海自が目撃したUMA、東京の地下要塞、白蛇に祟られたレンジャー候補生等々……)も教えてもらえました。

そのうちの1つ、最もオカルト的だと感じた話を投稿します。

事前に申し上げますが、この話は不正確且つ他の方も聞いたことがあるかもしれないものです。
「ベテラン自衛官→クラスメイト親の上官(先輩?)→クラスメイトの親→クラスメイト→自分」と、伝言ゲームの様に話が伝わってきているため、矛盾やおかしな点があるかもしれません。また、別所で類似した話を聞いた方がいるかもしれませんが、ご了承ください。
(注:「A」という人物が出てきますが、拙作に登場する廃墟探索が趣味のAとは全く関係ない別人です。)

その事件があったのは1970年代末、関西地方の駐屯地です。

まず前提として、以下の事を説明しておきます。

当時から現代まで行われる、「六甲降ろし」という非道な行為をご存じの方はいると思います。
街歩きをする女性をナンパして車に乗せ、とてもではないが歩いて帰ることが出来ない山奥に連れていき、淫らな行為を迫る──というものです。

当時、その駐屯地付近でもそのような行為が行われていたそうです。
しかし、地元の暴力団ではなく、もっとたちの悪い国外から来た半グレが行っていることもあり、検挙されることはなかったそうです。その中でも、特にある3人の半グレが常習犯として悪い意味で名を知られていたそうです。

ある真冬の日、自衛官Aは夜中に駐屯地の見回りを行っていました。
敷地の端のフェンスまで来た時です。そのフェンスに外からしがみ付く人影が見えました。

Aが「だれか!」と誰何しても、その人影は何も答えませんでした。
当時は過激派の台頭で治安が悪化しており、駐屯地を狙った犯行かとAは身構えました。

しかし、Aが近づくにつれ、その人影は洒落た格好をした女性だと分かりました。

華美な服装、つまり贅沢は悪と考える過激派では絶対に有り得ない格好であり、Aは更に不審がりました。
そして、その女性はピクリとも動かず、捨てられたマネキンのようにも見えました。

「だれか!」と再び誰何しても彼女は答えず、Aが近づいてフェンスを掴んでいる指に触った時、彼女が既に完全に冷たくなっていることに気付きました。

Aは慌てて無線で同僚を呼び、「フェンスに女性が倒れ込んでいる」と救急と警察を要請しました。
フェンスの向こうには救急車が来れるような道はなく、Aは駆けつけた見回り担当と共にフェンスの向こうに回り、担架で女性を駐屯地の入り口まで運びました。

女性は、Aが発見した時には既に事切れており、死因は凍死でした。
街歩きのような軽装で、どう考えても自らの意思で山を登り、遭難したとは思えない格好の上、何処からか落下したのか片足を折ってしまっていたそうです。

現場を見た警官は、「(フェンスの近くにある)5mほどの崖から転落し骨折、フェンスまで這いずって来たものの立ち上がったところで力尽きたのだろう」と推察したそうです。

そして、明言はしませんでしたが「”六甲降ろし”を拒否し、車外に放り出され、街歩き向けの薄着で雪山を放浪した末の悲劇だろう」との結論を導きました。

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