真っ暗な空間。目の前には、見覚えのない男性の顔が浮かんでいる。白髪混じりの髪の毛に、シミやシワの目立つ顔立ち。50~60代だろうか。
その顔はただ、じっとこちらを見つめている。
「そんな夢を見てしまいまして。とても怖かったんです」
怪談取材をしていると実に様々な体験談を聞かせて頂く。幽霊は出てこないが怖く感じるお話、妖怪を思わせるようなお話、不可思議な体験談。
このお話は、同じ埼玉県出身という理由で知り合ったとある男性から聞かせて頂いたお話である。
たしかに怖く感じるお話ではあるのだが、“夢で見たこと”まで怪談に含んでしまうと、なんでも有りになってしまうので、この体験を披露することは無いだろうと思っていた。
「誰だろうあの人。あんな人いないよな」
朝起きたとき、夢とはいえその顔をハッキリ覚えていた。
洗面台で顔を洗い、タオルで拭いたあとに鏡を見ると、自分の顔がその“夢で見た男の顔”になっていた。
驚いたとき反射的に出る「うわっ」という声と共にその男の顔を見ると、口をパクパクさせ何かを言っていることに気づいた。
「いるよ。いるよ」
思わず顔を伏せ、もう一度鏡を見たときには自分の顔に戻っていたそうだ。
「いつか、あの男に会ってしまうのではないかと思うと‥」
その夢で見た男は、この世のどこかにいるのかもしれない。
前のページ
1/1
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 10票
























「こちらをじっと見ている」のが、未来での関係性を示唆しているのでしょうね。2回も鏡に映るのは出くわす確率も高そうで、怖いです😱