田嶋さんが引っ越してから、しばらくは何も起こりませんでした。
けれど、数ヶ月経ったある日、私のもとに妙なメールが届きました。
> 「黒い影、まだいますか?」
「最近、夢に出てくるんです。あなたの後ろに」
それは、あの相談以来まったく連絡のなかった田嶋さんからでした。
私は一応返信しましたが、「今は大丈夫ですよ」としか返せませんでした。
——このときはまだ、軽い後遺症のようなものだと思っていたんです。
—
それから間もなく。
私の出勤時、最寄り駅のベンチで田嶋さんが座っているのを見かけました。
偶然かと思ったが、それが3日連続で続きました。
声をかけると、彼女はにこにこしながらこう言いました。
> 「ああ、偶然です。……でも、やっぱりあなたの後ろって、何かいるんですね」
冗談のように言うその目は、まったく笑っていなかった。
—
そこから、彼女は“頻繁に私の近くに現れる”ようになった。
職場の最寄りのコンビニ、帰宅途中のバス停、休日のスーパー。
私が教えていない場所に、なぜか必ず彼女はいた。
一度、正直に聞いたことがある。
「なんでついてくるんですか?」
彼女は、笑いながらこう答えた。
> 「だって、あなたは“選ばれた側”でしょ?
私、どうしても“守られたい”んです。
どうすれば、その影に振り向いてもらえるの?」
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