この話は、後輩の佐々木くんから相談を受けたときのことです。
彼は元々霊感もなく、怖い話にも無縁のタイプでした。
それなのに、ある日ぽつりと私にこう言ったんです。
> 「……先輩って、“見える人”ですよね。
ちょっと、おかしいことが続いてて」
—
彼の話によると、最近引っ越したアパートで「誰かにずっと見られている」ような感覚があるとのこと。
特に、朝出勤するために部屋を出るとき、2階の階段を下りる途中で、必ず「視線」を感じるというのです。
階段の3段目に足をかけた瞬間、ぴたりと何かが“ついてくる”。
彼の部屋の向かいは、契約上空室。
それなのに、毎朝そのドアの覗き穴から「誰かがこっちを見てる気がする」と言うのです。
最初は気のせいかと思っていたそうですが、ある日スマホでこっそり撮影したところ——
覗き穴の奥に、人間のものとは思えない、“白目のない真っ黒な目”が1つだけ写っていた。
「目だけ、ぽつんと。……まるで、俺がちゃんと出ていくか見てるみたいだったんです」
—
私は、彼の話を聞きながらあることに気づいていました。
話している最中、彼の背後の空気が妙に重たいのです。
目には見えませんが、私はずっと霊感があるタイプで、“黒い影の神様のようなもの”に守られている感覚が、昔からあります。
普段、そういった影が周囲に近づくと、その存在が「間に入ってくれる」感覚があるのですが——
そのときだけ、私の“黒い影”がじっと彼の背後を見ていたのです。
まるで、何かを警戒しているように。
—
数日後、彼から再び連絡がありました。
「引っ越します。やっぱりダメでした」
























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