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それから私は、何度か“影”の気配を意識するようになった。
田嶋さんに会ったあとの夜だけ、部屋の隅に黒い影が立っているのがわかる。
けれど、以前のような安定した気配ではなく、どこか警戒しているような、緊張感のある雰囲気だった。
まるで、「何かが近づいていること」を知らせているかのように。
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ある晩、私はベッドでうとうとしていた。
すると突然、インターホンが鳴った。
夜中の2時。2回だけ。
背筋が凍る。
モニターを見ると、誰もいない——でも、ドアの前に気配だけがある。
そのとき、黒い影が私の部屋の中で動いた。
いつもより大きく、鋭く。
その瞬間、インターホンがふっと切れた。
翌朝、ポストに一枚の紙が入っていた。
> 「あの影、あなたのことしか見ない。
だから私、あなたになればいいと思った」
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私はすぐに警察に相談したが、決定的な証拠もなく、何もできなかった。
田嶋さんはその後、突然連絡が取れなくなった。
会社も辞め、住んでいたマンションも退去していた。
けれど、それから数週間後。
鏡を見ると、後ろにもうひとつの影が映っていることに気づいた。
ひとつは、ずっと私を守ってくれていた“黒い影”。
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