撮影現場までの移動中のバスの中。『曰く付き』な屋敷の噂の内容を知る為に、僕は近くに座るカトウさんに話しかける。
「カトウさん。」
「なんだい?」
「これから行く屋敷には、どんな噂があるのか、教えて頂けませんか?」
僕の質問に、カトウさんは、
「うん、いいけど…。気持ちのいい話じゃないよ。」
と、カトウさんは言い淀む。
だがマナミさんの、
「あ、私も是非、聞いておきたいです。演技のためにも、知らなきゃいけない事ですし。」
という言葉を聞き、
「わかったよ。まぁ僕の詳しいわけじゃないんだけどね…。」
と、カトウさんは話し始める。
耳を傾ける僕とマナミさん。ミキさん。そして二人の女性スタッフ。
「今から十年前の話だ。三人の男女がいた。
女性はA。
二人の男性は、それぞれBとC。
ある日、三人は町の丘にある立ち入り禁止区域に入り込んだ。
禁足地で、三人は、門を抉じ開け、地蔵を破壊し、最奥にある祠の封印を破った。
扉の中には、一体の日本人形があった。
そして、その三人は、特に直接封印を破った女は、呪われた。
取り憑かれたAの姿は、人間には見えない程に、『歪んで』いたそうだ。
Aの両親は、屋敷の一室にAを閉じ込め、回復を図ったが、まったく改善せず、両親の精神も蝕まれていった。
そして、最後に、Aとその両親は、屋敷の一室で、首を吊って死んでいたそうだ。
最後に、家族の間で何があったのかは、誰にもわからない。
他の二人の男達も、時同じくして、誰も居ない部屋で、首を吊って死んでいたそうだ。
以来、人の住まなくなった屋敷は荒れ果て…。
今日に至る。
屋敷の家族が首を吊っていた部屋は、開かずの間となり、十年間誰も足を踏み入れていない。
二階にあるAの部屋の窓からは、白い装束を着た女性の姿が何度も目撃されている。
屋敷の中に入った者や、屋敷を荒らす者には、呪いが降りかかるとも言われている。
それが、今日、これから行く屋敷に伝わる話だ。」

























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。