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心霊

ねこじろうさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

市之助くんとのひと夏のおもひで
長編 2025/05/01 08:28 10,054view
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車内アナウンスで前嶋は、パッと現実に引き戻される。

━この次の駅だな

彼は一つため息をつき腕を組み俯くと正面の通路に向け、またあの夏休みの間での市之助くんとの思い出を考える。

雨の中傘もささずにポツンと立っていた、あの姿。

二人だけの秘密の場所だった廃神社。

いつもどこかボンヤリ遠くを見ていた、あの横顔。

そして彼の家で目撃した、恐ろしい男女の姿。

あれはいったい何だったのだろうか?

それから電車が停車ししばらくした後、再び動きだしたくらいのことだ。

一瞬車内が漆黒の闇に包まれた。

少し慌てて前嶋は辺りを見渡す。

それから灯火はすぐに復帰した。

ガタン、、ガタン、、、ガタン、、ガタン、、

足元から響いてくる小刻みな車輪の音。

車両にいるのは数人の乗客。

皆長椅子で腕組みし、暗い顔で俯いている。

※※※※※※※※※※

前嶋はまた腕を組むとうつむき、正面の通路に視線をやった。

そしてドキリとする。

視界の上方が何かを捉えていた。

それは膝下に伸びるきちんと並んだ二本の足。

ただその足はどす黒く筋張りあちこち裂け、白い骨が覗いている。

足先には白い上靴を履いていた。

彼は懸命に顔を上げようとするが、何故か金縛りにあっているかのように動かない。

心臓は激しい拍動を繰り返していた。

ただ視界が捉えてきれているのは膝までで、その上を伺い知ることは出来ない。

二本の不気味な足はゆっくり前嶋の方へと歩き進むと、目前でピタリと立ち止まった。

6/13
コメント(2)
  • こんなに感動したものは初めてです。
    名作じゃんけ。

    2025/08/18/11:16
  • コメントありがとうございます
    ─ねこじろう

    2025/10/03/10:05

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