車内アナウンスで前嶋は、パッと現実に引き戻される。
━この次の駅だな
彼は一つため息をつき腕を組み俯くと正面の通路に向け、またあの夏休みの間での市之助くんとの思い出を考える。
雨の中傘もささずにポツンと立っていた、あの姿。
二人だけの秘密の場所だった廃神社。
いつもどこかボンヤリ遠くを見ていた、あの横顔。
そして彼の家で目撃した、恐ろしい男女の姿。
あれはいったい何だったのだろうか?
それから電車が停車ししばらくした後、再び動きだしたくらいのことだ。
一瞬車内が漆黒の闇に包まれた。
少し慌てて前嶋は辺りを見渡す。
それから灯火はすぐに復帰した。
ガタン、、ガタン、、、ガタン、、ガタン、、
足元から響いてくる小刻みな車輪の音。
車両にいるのは数人の乗客。
皆長椅子で腕組みし、暗い顔で俯いている。
※※※※※※※※※※
前嶋はまた腕を組むとうつむき、正面の通路に視線をやった。
そしてドキリとする。
視界の上方が何かを捉えていた。
それは膝下に伸びるきちんと並んだ二本の足。
ただその足はどす黒く筋張りあちこち裂け、白い骨が覗いている。
足先には白い上靴を履いていた。
彼は懸命に顔を上げようとするが、何故か金縛りにあっているかのように動かない。
心臓は激しい拍動を繰り返していた。
ただ視界が捉えてきれているのは膝までで、その上を伺い知ることは出来ない。
二本の不気味な足はゆっくり前嶋の方へと歩き進むと、目前でピタリと立ち止まった。

























こんなに感動したものは初めてです。
名作じゃんけ。
コメントありがとうございます
─ねこじろう