冒険王、ぼくらマガジン、少年チャンピオン、、、
そこには俺が見たこともない雑誌がある。
俺は床に座り、市之助くんはベッドの端に座ると初め当たり障りのない四方山話をしていたが、やがて話題も尽きたくらいに俺は棚から雑誌を適当に一冊を取り読み始めた。
市之助くんはというと、窓の方をただボンヤリ見ていた。
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しばらくして尿意をもよおした俺は、トイレを借りる。
部屋を出て廊下を挟み正面にあるということだったから俺はドアを開き、トイレのドアノブに手を掛けた。
そしてふと右方の居間に視線をやったとたん、一瞬で背筋を冷たい何かが突き抜けた。
居間奥のサッシ窓からの陽光は弱まっていて、今は室内の様子がはっきり露呈されている。
使い古した紺の作業着の男と、
白いブラウスに紺のスカートの女。
食卓テーブルの向こうで二人の男女が前後に重なるようにこちらにだらりと背を向け、空中に浮かんでいる。
いやよく見ると違う。
空中に浮かんでいるのではない。
二人は天井から垂れ下がる荒縄に首を通し、吊り下がっていた。
異様に伸びた首でガックリと肩を落としてうなだれ、微かに左右に揺れている。
俺は恥ずかしながら少しおしっこを漏らしてしまう。
慌ててトイレで用をたし部屋に戻るとベッドに座る市之助くんに向かって先ほどのことを震える声で伝えたが、彼は全く動じることなくただじっと俺の目を見ているだけだった。
帰り際もう一度居間の方を見たが、その時にはもう人の姿はなかった。
やがて長い夏休みは終わる。
それから市之助くんと出会うことは二度となかった。
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ゴトン、ゴトン、ゴトン、ゴトン、、
━まもなくK町通り西に着きます。
お忘れものなきよう、、、





















こんなに感動したものは初めてです。
名作じゃんけ。
コメントありがとうございます
─ねこじろう