看護師が「ほら、椛島さん、お友達がお見舞いに来ましたよ」と促すと、
椛島はずっと俯いていた顔を突然上げ立ち上がると真顔で俺の顔と看護師の顔を交互に見てから、
「あんたたち、大丈夫か?」と心配げに言った。
それから看護師の制止を振り切り、
立て続けに喋る。
「奥にもまだ誰かいるのか?」
「すぐ戻ってくるから、ここにじっとしてるんだぞ」
※※※※※※※※※※
結局椛島とは一言もまともな会話が出来ず、病院をあとにした。
帰り際に担当看護師から聞いたのは、
入院した当初はもっと酷かったらしく、
突然「おおい!」と叫びながら廊下を意味もなく全力疾走したり、
他の患者はもちろんのこと病院スタッフに対してもさっきのようなことを言い続けていたそうで、
最近は食事と睡眠の時以外はほとんど自室奥の壁に立ちぶつぶつ独り言を呟いているが、たまに思い出したようにさっきのようになるということだ。
俺はあいつがいつかまた昔のようになってくれたらと、今はただただ願うだけだ。
【了】
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怖ー
コメントありがとうございます
━ねこじろう
怖いけど切ない。良いお話をありがとうございました。
コメントありがとうございます
─ねこじろう