手前には通行止めのバリケードが並んでいる。
椛島は車を左に寄せ停車すると下りた。
それからバリケードの手前に立つ。
俺も隣に立つと、トンネル入口辺りに視線をやる。
レンガ造りのそのトンネルはかなり古びていてあちこち破損しており表面のあちこちには緑色のこけが、隙間からは雑草が生えていた。
どうやら廃トンネルのようだ。
アーチ型の入口上部には横長のネームプレートがありトンネルの名前らしきものが刻まれているようだが、汚れや錆びでとても読めない。
トンネルの中は、漆黒の闇の奥にポツンと小さな光が見えている。
さらに気になったのは、入口脇に数体のお地蔵さん、そしてたくさんの花束やお菓子人形とかが置かれていることだ。
「なあ、ここって昔何かあったのか?」
椛島はチラリと俺の方を見てから頷き花束に一礼すると、無言でゆっくり歩きだした。
俺も後に従う。
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バリケードをくぐった辺りで椛島は立ち止まりポケットから懐中電灯を出すと、正面を照らした。
一瞬で光の輪っかがトンネル内部の暗闇を切り裂く。
俺たちはその光の輪っかを頼りに、薄暗い道を歩き進んだ。
もう夏だというのに、中はひんやりした空気が漂っている。
どこからだろうか?何かガスのような不快な匂いが鼻を掠めた。
時折首筋に冷たいものが落ちてきてビクリとする。
聞こえてくるのは二人の足音とポタリポタリという水滴の落ちる音だけだ。
それからしばらく進んだ辺りで、椛島が突然立ち止まる。
「どうした?」
少し焦りながら彼の横顔に尋ねると、
「し~~~!」と唇の真ん中に人差し指を立てる。
訳も分からず俺も息を殺し耳を澄ました。
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怖ー
コメントありがとうございます
━ねこじろう