「え?外に立ってる女性の方は、お客さんのお連れさんじゃないんですか?」
ドキリとした彼は恐る恐る開かれたドアの向こうに視線をやる。
だがそこにはだれもいない。
「運転手さん脅かさないでよお、俺は最初から一人だったよ」と少し焦りながら言うと運転手は振り向きドアの外に視線をやり、
「あれ?おかしいなあ、、、
さっきは女性の方がお客さんの背中にくっつくようにしてから立ってられたんですがねえ、、、」と不思議そうに言うと、ようやくドアを閉じた。
※※※※※※※※※※
タクシーでさとるは駅まで行くと帰りの電車に乗り、長椅子に座る。
しばらくしてさっきホテル前で拾った紙のことを思い出した彼は、ポケットから出し膝上に置く。
それは大学ノートを一枚破ったものをきちんと折り畳んだもの。
彼は目前でゆっくりそれを開いていった。
整然と並んだ罫線の行すべてが同じ2文字で埋め尽くされていた。
━死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
━何だこれは、、、
思わず呟いた後刺すような視線を感じたさとるが俯いていた顔を上げた途端、ゾワリと背筋に冷たいものが走る。
真っ赤なドレスを着た長い髪の女が座っていた。
うつむき気味の骨張った顔で前髪の隙間から恐ろしい形相で彼を睨んでいる。
小刻みに震える二つの膝頭をただじっと睨みながら彼は
違う、、俺は父じゃない違うんだ。
とひたすら何度も何度も繰り返し呟きながら立ち上がると、ふらふら通路を歩きだす。
それから連結部のドアを開き隣の車両に移った時、電車はちょうど駅に停車していた。
彼は電車を下りるとそのまま歩き続け改札を過ぎた後、逃げるように雑踏の中に消えた。

























なぜ草なんだろう?
草葉の陰からという言葉にもあるように、
草というのは、冥界をさす言葉でもあるようです。
─ねこじろう