なぜ、3時きっかりに来なければならないのか。
なぜ、明日に限って、Y子ちゃんのお家の人たちのように、途中の神社の鳥居をくぐり、近道を通ってはいけないのか。
もう少し詳しく知りたかったのですが、あの大人しいY子ちゃんには珍しいほど、眼光鋭く、威圧的な口調に気圧(けお)されてしまい、それ以上は、尋ねることができませんでした。
「鳥居をくぐらないで、(近道をせず)3時に来て。遅刻はなしということで。約束だよ。」
「うん。分かった。じゃぁ、明日。鳥居をくぐらないで、3時きっかりに来るね。」
私は、二度復唱し、Y子ちゃんの家を後にしました。
(もし、その約束を破ったら。どうなるのだろう。)
帰り際、一抹の不安が胸を過(よ)ぎりましたが、いつも優しく穏やかなY子ちゃんが言うことだから、それほど重要なことではないように思えました。
この時、なぜ、ちゃんと聞いておかなかったのか、後に我が身に降りかかる災禍を思い起こす度、ただただ後悔だけが残ります。
尤も、深堀りして聞いたところで、Y子ちゃんがその理由を話してくれるとは到底思えませんが。
日が傾きかけた稲荷神社の参道を通り抜け、私は、
「今日は、近道してもいいのよね。」
そう言い聞かせながら、鳥居をくぐり抜けました。
その時です。
ゾクリ
一瞬ですが、背中と頭上に、かつて一度も味わったことのない怖気を感じました。
憎悪を伴う殺気と言ったらよいでしょうか。
私は、胸騒ぎを覚え、悪意と憎悪の原因を探るべく、たった今来た道を振り返って見ましたが、神社までの参道が続いているだけで、何の変哲もない、ありふれたいつもの景色が広がっているだけでした。
ただ、この日は、10分足らずでたどり着けるはずの我が家までの道のりが、いつもの倍以上の長さに感じました。
実際、どうしたわけか、Y子ちゃんのお家を16時前には、出たはずなのに、家に着いた時間は、17時を少し回っていました。1時間以上もかかるなんて。
鳥居をくぐったはずなのに、どうしてこんなに時間がかかってしまったのだろう。
いつもより遅い帰宅に、母は、訝しげに問いかけてきましたが、Y子ちゃんの家で遊んでいたことを隠し、放課後学校で、同級生たちと一緒に宿題をしていた。それから、少しおしゃべりをしていたら、こんな時間になった。ごめんなさい。と。見え透いた嘘をつきました。
つい口を滑らせ、祖母に叱られないように、そそくさと食卓につき、夕食を食べ終えました。
それから、いつもの日課であるピアノの練習をしていた時、ふと、カレンダーに目が行きました。
「え?嘘。そんな。」
私は、愕然としました。
なんと、明日は、ピアノのレッスンがある日だったのです。それも、ちょうど、Y子ちゃんと約束した午後3時からです。
すっかり、失念していたことに気づき、慌ててY子ちゃんの家に連絡しようと、電話の有る居間に急いだのですが、母がなにやら深刻な顔で、電話をしている最中でした。
遠方にいる高齢の叔母が重篤な病に罹患し、緊急入院を余儀なくされたとのこと。誰が付き添うか、介護人を依頼するか、かかる費用などについて、一時間以上も話していたでしょうか。母が、受話器を置いた時は、既に22時を過ぎていました。
怖い
すみません。作者から一言お詫びを申し上げます。一度、アップしましたが、読み直してみると誤字脱字、表現の誤りが多く、一部もしくは数か所訂正させていただきました。再アップいたします。
ご笑覧いただけましたら幸に存じます。
貴重な体験でしたね。
怖いというよりちょっと感動した。
すみません
一時間後の後が語になってましたよ
あと面白かったです
*作者より
長編、しかもかなりひと世代前のお話。月の後半に投稿したにも関わらず、こんなに多くの方に読んでいただけるなんて恐悦至極にございます。
何度か手直しさせていただきましたこと、ところどころわかりにくかった箇所や読みにくい箇所など申し訳ございませんでした。今後、精進してまいりますので、お許しいただきたく存じます。
先月後半は、皆様のコメントに支えられ、励まされ、また筆を執ってみようかなと思いも新たにすることが出来ました。
心より感謝申し上げます。
お読みいただいた皆様ありがとうございました。
あまり閲覧されないようでしたら、筆を折る覚悟でいました。
でも、心機一転。新たな気持で新たなペンネームでこれからも書き続けたいと思います。
遅筆ではございますが、投稿した暁には、ご笑覧いただけましたら幸いに存じます。
<一時間後の後が語になってましたよ
大変申し訳ございませんでした。ご指摘ありがとうございます。
早急に訂正いたします。はて?どのあたりだったでしょうか・・・。^^; 今から、探します。
誤字脱字、入力ミスに変換ミスは、何年経っても治りませんね。これは、年齢と言うよりは、性格的なものかもしれません。これからは、極力そのようなことのないように慎重に投稿いたします。
また、間違いがありましたら、いつでもご指摘くださいませ。
<あと面白かったです
嬉しいお言葉感謝いたします。
これからも、精進してまいりますので、よろしくお願いいたします。
ご指摘いただきました箇所、1時間語→1時間後に 訂正いたしました。
ありがとうございました。