『すまない。疑ってしまった』
死んだ娘と電話できるなんて疑うのは当然だ。
『間違いなく本物の妻と娘だ。しかしどうして死んだ者と会話ができる?』
当然の疑問だった。
『電話で説明できる話でないわ』
声が犯人の妻のものと代わった。
『今から男性があなたのところに行くから、その人の言う通りにすればまた3人で暮らせるようになるわ』
そこで通話が切れた。現世と天国との電話には時間制限があるようだ。
『今の電話はどんなマジックを使ったのか?』
納屋警部は訳がわからぬと言う顔をしている。
『何も聞かないで俺に全部任せてください』
俺は犯人が立て籠もっている建物へと向かった。犯人はライフルで武装しているが一度死んだ経験のある俺に恐怖はなかった。
『お前が交渉人(ネゴシエーター)か?』
犯人は俺の黒焦げになった服装に戸惑っていた。
『警官が変装して来るのかと思った』
冷静になって考えたら死んだ家族が帰って来るなんて荒唐無稽なことがあるわけがない。
『人質は解放してください。俺が代わりに人質になります』
一度死んだ経験のある俺には今さら犯人のライフルを恐れる気持ちはなかった。
『言う通りにしたぞ。次はそちらが死んだ妻と娘を連れて来る番だ』
犯人は人質を全員建物の外に出した。
『それには最上階の部屋に移動してください』
俺と犯人は最上階に移動した。
『窓からサンタクロースでも入って来るのか?』
俺は刑務所で死神に会ってからの事を全部話した。
『すると死後の世界は実在して、妻と娘はそこにいるのか』
信じられない話だが二人の声を聞いた以上信じないわけにいかないだろう。
『そうかわかったぞ。最上階に来たのは窓から飛び降りるためだな』
この建物は高さ50mある。落ちたら確実に死ぬだろう。
『自殺しても家族のところには行けませんよ。自殺すると地獄に行くからです』























投稿者のグレートリングです。
あまり怖い話でないと自覚してますが、そんなものだと納得してお楽しみください。