「マジか!マジか黒田!どこだ!どこが怪しいんだ?」
「ううん…私の霊感だと…」
ハッキリ言ってついていけない、幻滅して中村に視線を送ると、こちらの無言の訴えに気づいたようで、「悪ぃな」と、手を合わせて頭を下げた
そこから、レントゲン室やら
待合室やら、手術室なんかを調べて、2階にも行ってみたりしたが、特に自分の第六感が反応するような場所は無かった。黒田は毎度のように騒いでいたから、もうこの時点で完璧な虚言だと自分の中で結論付け、黒田から発せられる全ての発言を右から左に聞き流していた。
「んじゃ、あと東棟の奥回ったら折り返ししましょうか。」
「おうそうだな、東棟にはバケモンみてぇなのいねぇかなぁ」
中村の提案に横澤がバカっぽく答える。正直、怖い怖くない、暇つぶしとかじゃない。本当に居心地が悪すぎて帰りたかったのを今でも覚えている。
だが、東棟に入ると
空気が一瞬で変わったのが分かった。
東棟は俗に言う病室が何部屋も隣接しているフロアなのだが、右奥の”207号室”から
とてつもない程の邪悪さを感じ、思わず足が固まっていくのが分かった。
そして、手前から1つずつ部屋を探索して行くことになったのだが、一部屋ずつ207号室に近づくにつれて、第六感が働いてくる。
脳みその真ん中から、何かがぐにゃぐにゃと全身に広がってきて、鼻先が痺れるような感覚に襲われる。というかもうこの時点で、何かが院内を走り回るような音や、ギリギリと何かが軋むような音が私には聞こえていたし、更に207号室の隣、205号室に入った際には、鼻の奥に塩酸を流し込まれたかのような強烈な痛みがやってきて、堪らず私はその場にうずくまってしまった。
「おい!?馨どうした!?」
咄嗟に中村が私の肩を揺すって安否を確かめてくれた、たが横澤は、涙目の私を見て怖さか限界に達したと思い込んだようで、スマホの画面をこちらに向けながらケラケラと笑っていました。
そして、肝心の黒田はと言うと
「ええ…これ、これは…
いやぁでも、手遅れになったら…」
と、何かをブツブツと呟き出し、廊下へと出ていきました。中村と横澤もそれに続きましたが、私はすぐそこから香ってくる邪悪な気配に吐き気すら覚えて、気絶しかけたその時。
「みんなぁ!!!!!」
と黒田が突然叫びました
「こ、これ!”206号室”!!
ヤバイよ!近くにいるだけで悪霊が寄ってくる!私には見えるの!!!急いでッッ!!!そこの207号室に入って!!!!!」
と半ば半狂乱になっていましたが、本人が指摘したのは207号室では無く、対面する206号室だった。横澤は少しビビった様子で手早く207号室を開け、中に入って行き、黒田も飛び込むかのようにそこへと入っていった。
「う”ッ…お”ぇぇぇええ!!」
今までの人生で最悪の嘔吐だった
奴らが207号室を開けた瞬間に、塩酸と腐乱臭が混ざったような物が鼻の奥で爆発した気分でした。
もうここにはいられない
そう思った瞬間に私は、嫌な後味を口の中に充満させたまま、中村の袖をぐいっと引っ張って、一目散に出口へと走っていきました。その最中に、私は中村だけに、自分には不思議な感覚があること、黒田の霊感が9割9部虚言であること、そして207号室が1番危険であったことを伝えました。
























よかった
中村には生きていて欲しかった