私の祖父は霊の見える人でしたが、祖父いわく、「霊感がある。」と自分で周りに言いふらす事は良くないらしいのです。
「霊っつーのは耳の良い奴らでな、そんな奴に霊感があるだ何だってのを聞かれたら、あいつらは自分を見せようと付きまとって来るけな、馨も人の前で霊感の話しちゃあかんで」
霊感と言えるかは分かりませんが、私には昔から第六感のようなものがありました。脳内が冴え渡る感覚がして、危険信号の役割をするかのように鼻の奥がツンとしてくるのです。そんな第六感が作動するのは、心霊体験や身の危険を感じた時だったので、そういう物だと、成長するにつれて受け入れてるようになりましたが、私は祖父の教えを守り、家族以外には伝えずに今まで生きてきました。
高校2年生の頃。
夏休みを利用してバイクの免許を取る奴が沢山いたのを覚えています。毎日のような猛暑に参って、部屋でくつろいでいた所に、友人の”中村”から連絡がありました。
「もしもし馨?今度さ、先輩たちと一緒に肝試しする事になったんだよ、ほら隣町の…
〇〇廃病院。ほんでよ、こういうの人数がいた方がおもろいし…何よりお前、こういうの好きだし、ホラー耐性もあるじゃん?来週の火曜なんだけど、行かね?」
確かに自分は肝試し…
というよりは肝試しで一喜一憂する人の反応が好きだ。なにより、退屈をしていたし、少しでも暇つぶしになればと私は二つ返事でOKを出した。
肝試しの日になると
晩御飯を食べ終えた午後9時頃、中村がバイクで私を迎えに来た。私は用意したバッグを肩にかけると、玄関にあった適当な靴を履いて、2人乗りで廃病院へと向かった。病院に向かう際、中村が言う
「そーいやよ、今日来るメンツに、霊感のある女の人いるんだぜ、友人間で肝試しとかすると、その人だけいつも何かが見えるらしい。」
そんな話を、ふーんと話半分で聞きながら、
他愛もない世間話をしていると、いつの間にか廃病院に着いた。
「男だか女だか分かんねぇの連れてきたなぁ中村、頼りになんのか〜?こいつ。」
着くや否やヤンキーみたいな見た目をした高身長の男が自分に向かってはっきり喧嘩を売ってきた。途端に不機嫌になる俺を見て中村が言う
「いやいや、コイツ、結構面白い奴ですから!こういう時頼りになりますし…あ、てか!そちらが霊感の…?」
「おうよ、黒田ってんだ。俺の彼女の友達なんだけどよ、霊感の強えやつなんだぜ」
と言われて男の後ろを見ると、メガネをした芋っぽい女がつかつかと出てきた。
「黒田です。私、こういうのには慣れてるから、何かあったら頼ってね、2人とも。」
鼻息をふすふすと鳴らして得意気に言う彼女の姿は、取り繕わずに言うなら
”無理をしたキャラ付けの厨二病”
と言った具合だ。
これでは万が一があった場合
自分の第六感を頼った方が良さそうだと、この段階で私は心に決めた。
施錠していなかった裏口から
廃病院の中に入ると、なんともカビっぽい、埃っぽい匂いがして具合が悪くなる
「うん…うん…雰囲気ある…
これ、”出るよ”横澤くん。」
どうやら男は横澤というらしい。そして黒田は入るや否や自分の霊能力を見せびらかすように大袈裟な口調で言う。
よかった
中村には生きていて欲しかった