金縛りが解けたのは、ちょうど息ができず意識が飛びかけた頃だった。
バチン!
全身の力が一気に解放され、俺はガバッと身体を起こした。
「はぁっ……はぁっ……!」
涙目で息を整えながら、慌てて顔をまさぐる。
……泥は、どこにもついていなかった。
夢だったのか?
いや、そんなはずはない。泥の重みも、口の中に入り込む感触も、すべてが 生々しかった。
「ふざけんな……」
ようやく落ち着きを取り戻し、ふぅっと息を吐きながら、布団に倒れ込んだ。
──いた。
まだ、いた。
俺の 真上に。
天井に張り付くようにして、まだそこにいた。
目が合った。
いや、目なんてなかった。
顔の中央には、ぽっかりと黒い穴が開いている。
それでも、俺は 目が合ったと分かった。
──「ミ….ミミ..ミエ..ミエテル?」
口なんてどこにもないのに、そう聞こえた。
喉まで叫び声が込み上げる。
──だが、俺は 理性をふりしぼり上を見続けた。
アイツを通り越した向こうの 天井の模様を見つめているかのようにするのに努めた。
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