その時、粘度のある液体のようなものが垂れる音がした。
ボトッ……ボトッ……
心臓が速くなる。息が詰まる。
見ない。見ない。見なければ消える。
とにかく無視し、目を閉じ、ひたすら耐えた。
すると、いつの間にか消えている。
──そんな夜を何度か繰り返すうちに、やり過ごせるコツは分かってきた。
でも、それを繰り返しているうちに、恐怖の感情は 次第に怒りへと変わっていった。
「ふざけるな」
怒りと恐怖。
耳鳴りの夜が続き、精神は限界に近づいていた。
お祓いなんて頼めるツテもない。
仕方なくネットでお祓いについて調べるようになった頃だった。
──また、耳鳴りが始まった。
「チッ……」
苛立ちが先に立った。
金縛りに耐える。
もう見なくても分かる。天井の端にいる。
最早目を開けるまでもなかった。
──ボトッ
何かが、顔の上に落ちた。
生ぬるく、粘り気のある感触が頬を伝う。
それとともに、生臭いイヤな臭いが鼻につき、全身の毛が逆立った。
──ボトトトトトトトトッ
次の瞬間、顔の上に 大量の泥が降りかかる。
「ッ……!!」
喉が詰まる。息ができない。
口の中に泥が入り込む。
必死にもがこうとするが、金縛りで身体が動かない。
“あいつが真上にいる”
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