優しく震える彼女の歌声と、悲しく鳴くギターの音色に、ボクはいつの間にか涙を流していた。なんだかいろんなことが脳裏をよぎる・・・なんだかわからないが涙がぼろぼろ止まらなくなり、彼女の姿も歪んで見れなくなっていた。
どれくらい時間がたったであろう・・・ふと気づくと、ボクはベッドの上で土下座するような格好でつっぷして眠っていた。布団カバーは涙でぐしょぐしょだし、顔はぐちゃぐちゃだし、マリーさんはもう消えていた。
「うわー、カッコ悪いとこ見られた~」
はずかしくて赤面ものである。マリーさん、ごめんなさい。良かったらまた歌、聞かせてください・・・。(TーT)
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【マリーさんと海の亡霊】
久しぶりではあるが、海辺に来ている。
大きく一息吸って「やっぱり海はいいもんだ」と思う。
朝からサーフィンに精を出す若者らの姿も見える。
「青春だねぇ」
そう独りごちて自分も海へ向かう。
今日、自分がチャレンジするのはSUP(サップ)つまり、スタンドアップパドルサーフィンというやつだ。わかりやすく日本式で言うと「立ち漕ぎボード」である。
日本語にするとちょっとダサイ。サーフィンほどは体力を使わないし、パドルを使ったターンも楽で、凪の海でも楽しめる。若いころほど体力のなくなった今の自分には最適だ。
サーファーたちのグループよりも少しだけ沖に出て、広い海の真ん中でポツンとひとり、のんびりと大海原を満喫していた。
こうしていると、過去の嫌なこともすっかり忘れることができる。
どれくらいたっただろうか、波が作る1/fゆらぎに身を任せていた時、不意にボードの下に大きな影が動いているのが見えた。
「えっ!? まさか、サメか?」と驚いた。
いわゆるシャークアタックなんて事はそうそうあるものではないが、海水浴場にサメが出没ともなれば、しばらく浜は遊泳禁止になる。・・・だがそうではなかった。
「うぐっ」
思わず叫びにもならない声をあげてしまった。
それはサメでも魚でもない。人間だ。
「人間!?」
kanaです。
この作品は2022年の春頃に書いたマリーさんシリーズの4編をまとめて、加筆修正してまとめた完全版として書き上げたものです。長編18ページとなりましたが、面白く読めると思いますので、ぜひお読みください。後半に出てくるニンニンこと、除霊師・忍足 忍(オシダリ シノブ)は、朽屋瑠子シリーズの「赤騎士事件」にも朽屋の同僚として登場する除霊師です。スピンオフ参加です。お楽しみください。
読んでいる途中で感情移入をしたようで、涙が止まりませんでした。
良い話や
すごい感動しました👏
最高です!
※勲章授与のシーンで脱字がありましたので修正しました。
kanaです。
劇中歌として『ホームにて』と『時はながれて』をマリーさんが歌っていますので、
よろしければそれを聞きながら読んでいただくと、臨場感も湧くと思います。
ちなみに、検索をかけると『時はながれて』と同名のタイトルの楽曲を複数の方が歌われているようで、もしかしたら違う曲を聴く可能性もありますが(笑)、マリーさんが歌っているのはあくまでも「某有名女性フォークシンガー」が歌われている曲です。失恋の歌が多い方ですよね。
では、お楽しみください。
↑↑感動したというコメントをいただいて大変ありがたいです。あと、怖くないのにこわいねボタン押してくださる方、ありがとうございます。
みなさんはどのシーンでほろりと来ましたか?
怖いの苦手な方も、ぜひお楽しみください。
さすがです。
本を買ってみたい