死神の副業 たったひとつのタブー
投稿者:グレートリング (3)
短編
2025/01/28
19:50
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そんなある日のことだ。俺は買い物のため町に出かけた。いくら走馬灯の中でも品物が空中から現れるわけではない。
『大崎ではないか?』
走馬灯の中で知り合いに会うのは初めてのことだ。
『教師役が板に付いたようだな』
死神の雷神三郎だった。いつもの車夫の装束で人力車を引いた。
『ここは俺の走馬灯の中ですよ』
勝手に入りこまないでほしい。
『あなただけの精神世界じゃないわ』
人力車に乗っていたのは料金所の女性だった。確か名前は北風だ。
『本名は喜多村風子。通称はフウコよ』彼女の出番は料金所のシーンだけのはずだ。
『死神としてはまだ半人前だから人力車の引き方を教えている』
だからと言って走馬灯の中を走らないでほしい。
『少しお兄さんと話があるから煙草でも吸って来て』
北風が座席から降りると、死神は人力車を引いて離れて行った。
『クラスにHさんって女の子いるでしょう』
北風は俺に話しかけた。
『いるけど、それがどうした』
『今から数年後にHさんは歩行者天国で貴男に刺されるわ』
『何だって。俺が大事な生徒を傷つけるはずがない』
『今の貴男じゃなくてもう一人の貴男に刺されるのよ』
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投稿者のグレートリングです。
無差別殺人を犯した主人公がお気楽な日常を楽しむのは不公平なので少し苦しめることにしました。