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心霊

AAA×スバルさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

白昼の廃屋
長編 2025/01/20 12:53 2,196view
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以前訪れた時はゴミ屋敷かのように物が散乱していたが、久しぶりに入った部屋は綺麗に片付いていた。
それどころか、テレビや電子レンジなどの生活に必要な家電すら無くなっている。
そして全ての窓ガラスに、黒い布が貼り付けてある。
まるで何かを隠しているようだった。
「剛さん、急にバイト辞めちゃうから心配してたんですよ。何があったんですか」
剛は翔太にもらった差し入れのスポーツドリンクをちびちびと飲みながら、ふうと息を吐いた。
「……俺、近いうちに実家帰るんだ。実家に帰れば多分もう追いかけてこない」
「追いかけてこないって……何が?」
「……見ただろ、女。あの家で」
そう言われ、あの日見たベランダの女のことを思い出す。翔太は無意識にあの女のことを思い出さないようにしていたのだ。

「……剛さん、記憶、戻ったんですね」
「ああ、全部思い出したよ」
そう言うと剛は、あの日の出来事についてゆっくりと語り始めた。

「一人で二階に行って、最初に入ろうと思ったのがあの寝室だった」
剛はいちばん手前にあった寝室に入ると、部屋の中をぐるっと見回した。
埃が積もったシングルベッドが二つ、その間に目覚まし時計の置かれた小さなテーブルが一つ、そして壁には家族写真が飾られたコルクボードのようなものがあった。
「その家族写真がさ、変なんだ。顔のところが全部黒く塗られてて……」
翔太はふと、和室で見た遺影のことを思い出した。あの部屋の遺影も確か顔を塗り潰されていた。
「その写真をまじまじと見てて気づいたんだけど、一人だけ顔を塗られてない女がいたんだ。どの写真でも家族と距離を置いてて、なんか家族の一員って感じじゃなかった」
その女は長い髪で顔を隠しており、どの写真でも同じ薄紫のワンピースを着ていた。

「それで俺、これなんかヤバい写真なんじゃね?と思って。翔太が外に出る音が聞こえたから、ベランダ出て声かけたんだ」
翔太に声をかけ、部屋に戻った剛は部屋の真ん中に不自然な赤黒い染みを見つけた。
それは長い間そこにあったというより、たった今何かを溢したような新しい染みだった。
(なんだこれ、さっきまでこんなのあったっけ)
その時、何かがバサリと落ちてきて剛の顔に触れた。見上げると、長い髪を垂らした女が蜘蛛のように天井に張り付いていた。

「ウッケケケケケケケケケケ」

女の顔はよく見えないが、真っ赤な口から赤黒い液体がボトボトと垂れているのが見えた。
剛はそこで悲鳴を上げ、気を失ったのだ。

「……そんなことが……」
翔太は言葉を失った。
とても信じられない話だが、あの日翔太もベランダに立つ不気味な女を見ている。
何より、いつも強気な剛が何かに怯えている姿が、それが現実であったことを物語っていた。

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