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心霊

ひなたんさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

海水の匂い
短編 2025/01/17 02:21 974view
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(あんなことがあったから変な夢を見たんだ)
時計を見ると午前3時を過ぎたところです。
私は再び眠りにつこうとしましたが、その時ふわっと磯の匂いがしました。
反射的に匂いのしたほうへ顔を向けると、出窓の前に誰かがいました。

暗闇の中目を凝らし、よく見るとそれは髪の長い女性でした。
夢に出てきた女性と全く同じ後ろ姿でそこにいました。

「泳げないのに……水は嫌い……大っ嫌いなのに……だからついてきたのに……」

夢の中で聞いた時よりもはっきりと女性の声が聞こえました。
恨みと悲しみが混じったような低い声で、壊れたラジオのように何度も同じ言葉を繰り返しています。
私は硬直し、その光景をただ泣きながら見ていることしかできませんでした。

やがてゆっくりと女性が振り向きました。
眼球のあるはずの部分が空洞になり、涙なのか海水なのか、透明の液体がボタボタと流れています。

「だから会わせてええぇ……」

ひときわ大きな声で女性が叫びました。

私はそこでふっと気を失いました。

翌日、大学の友達からの連絡で目を覚ましました。
私はお昼過ぎまで寝ていたようです。
あれは夢だ、と思いましたが、起き上がって出窓の前を確認するとそこには奇妙な水溜まりができており、ほんのり海水の匂いがしました。

その後私は一度も出勤することなくホテルのバイトを辞めました。
あの出来事が関係あるのかは不明ですが、ホテルはその後一年もしないうちに潰れたようです。
あれ以来おかしな体験はしていませんが、海水の匂いがトラウマになり海には行けなくなりました。

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