次の停車駅は地獄です
投稿者:チョコラブ (3)
短編
2025/01/15
18:48
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「……助けて……」
もう限界だ。気が狂いそうだった。
そのとき、**ポタ……ポタ……**と何かが滴る音が耳に届いた。
――見たくない。だが、抗えずに、俺はゆっくりと天井を見上げた。
そこには、長い黒髪の女が天井に張り付いていた。
ねじれた体で、顔だけがぐるりと俺に向いていた。
「お前はどこの駅で降りるの?」
その声は耳ではなく、頭の中に直接響いてきた。
俺の全身は凍りつき、視線を外せなかった。女の裂けた口がゆっくりと歪む。
その瞬間、意識が途切れた――。
気がつくと、俺は見慣れた駅のホームに立っていた。毎日通っている、あの駅だ。
「……夢、だったのか?」
そう思いたかった。だが、冷たい汗が背中を伝い、心臓は激しく脈打っていた。
深く息を吸い込み、目を閉じた。大丈夫だ、何もいない。
そう思って、ゆっくりと目を開けた。
目の前に――あの女が立っていた。
「次こそは必ず降りてもらうから……」
裂けた口が、ぐにゃりと笑った。
俺は今も、おびえながら電車で通勤している。
車を買う金もなければ、タクシーで通う余裕もない。
仕方なく、俺は今日も電車に乗る。
……もし、お前も電車に乗るなら――
いつ死ぬ覚悟は持った方がいいだろう。
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