06、関連資料⑵:新聞記事の抜粋(■■新聞 2022/08/04 夕刊)
誤通報か ■■山で「首吊り死体」
警察捜索するも発見できず
4日午前1時30分頃、■■県■■市■■町■■山で登山中の男性から「山頂で首吊り死体を発見した」と110番通報があった。駆けつけた警察官が現場で男性を保護し、山頂とその周辺の捜索をおこなったが、男性が通報したような遺体は発見できなかった。
通報した男性は■■県立■■大学に通う男子大学生で、深夜に■■山に登っていたところ山頂で首吊り死体を発見したという。男性は動画配信サイトで配信中だったとのことで、夏の肝試し企画のために深夜に■■山を訪れていたと話している。
発見された際、男性はかなりの錯乱状態だったことから、■■県警は「誤通報」だとした。しかし現場には身元不明の足跡や衣類の残骸・腐敗した人体の一部も確認されており、県警は事件性があるとして引き続き周辺地域の捜索・見回りをおこなうと発表している。
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07、インタビュー記録(一部抜粋):2022/08/11
インタビュー対象者:北田■■氏
旧■■村の元住民・84歳・女性
えぇ、たしかにそのような話はあったと記憶しています。
ただ……信仰だとか伝承だとか、そのような大袈裟なものではないんです。私が子どもの頃に両親から聞いて、両親はそのまた両親から聞いた昔話のようなもので。ですから私が直接何かを見たりしたわけではないのはもちろんのこと、身近な人間が実際に会ったという話すらも……少なくとも私の知る限りではないのです。何代前なのかもハッキリしない遠い遠いご先祖様が、亡くなった死者を想いながらあの山を登っていると山頂でその人に会えたらしい……という話が住民のあいだでのみ、かろうじて伝わっている。それだけなんです。それを示すような古い文献があったわけでもなければ、■■山に何かが祀ってあったわけでもありません。私自身、本気で信じているわけでもありません。たしかに何もないところから、そういう話は生まれないかもしれませんが……しかし、それ以上のことを私は知らないのです。
──妖怪?すみません、私にはさっぱりで……生まれてからずっと私はあの村で生きてきましたが、小耳に挟んだことすらありません。何か別のことと勘違いされているか、誰かが作った噂話でしょう。事前に旧■■村のことをお調べになったのなら、そのような話はなかったはずです。あなたは何かを知りたくて、あの村のことを調べた。ただ満足する情報が得られずに、私のところへ赴いたことと思います。でも恐らく、それで全てなんです。情報が出てこないのは、それだけ何もないような平凡な村だったということを示しているだけなんです。どうしてもと言うなら、■■山を探し歩いてはいかかでしょう。何もないと、お分かりになるはずです。
……まだ、納得されていないご様子ですね。
あなたが何を知りたくて、あるいは何を求めて此処に辿り着くに至ったかは存じませんが、今一度ハッキリと申し上げておきます。
なかなかたのしめた。
作中の伏せられた地名に、地元の地名を当てはめて、勝手な想像しながら読んだ。配信動画の傍観者になった気分で。
よかった