ひとくち怪談─カメラ編─
投稿者:マチノスケ (16)
生首を持ってたんです。
しかも、その生首の顔が……信じられないと思いますが、映ってる人たちと全く同じ顔なんです。同じように、笑ってるんです。不気味という一言では到底済ますことのできない、とてつもない不快感と恐怖に襲われました。えぇ、すぐお祓いしてもらいましたよ。心の底から見たことを後悔しました。
あれは、間違いなく本物です。今の時代「心霊写真が撮れた」といっても、即座にCGや加工を疑われてしまうじゃないですか。そういったことが、誰でも簡単にできてしまうから。でも、あれは違う。あのような古い機器に残されたものには、有無を言わさぬ説得力があります。当然CGなんてない時代、機器の精度や映り加減、光の影響やらで片付けようにもあんな光景が映るはずがない。あれは絶対にこの世ならざる者が干渉しているんです。
……いや、むしろそうであってほしいんです。
だって一番恐ろしいのは
あの写真が、ただ現実を映したものだったらって考えたときですよ。
いったい何がどうなったら、自分と同じ顔をした生首を持って、笑いながら一列に並んで写真を撮るっていう状況になるんですか。
そっちの方が、よっぽど怖いじゃないですか。
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5、「うつる」ということ
心霊写真や心霊映像の話題を聞く度に、思ってしまうことがあるんです。
あれって、カメラにうつった方が正しいんじゃないかなって。
だって人間の目って、世界をそのまま見ているわけではないじゃないですか。人間の視界は、目に入ってきた情報を脳が解釈して再構築した世界なんです。だからこそ見間違いや目の錯覚というものが起こるわけであって。人間の目は思っているよりも「あるもの」が見えず、「ないもの」を見るんです。でもカメラには、そういったものがないから人間の目より忠実なんです。脳という色眼鏡で見ない分、純粋な世界をうつしていると思うんです。要は何が言いたいかというと、写真とか映像にうつった怪異……少なくともハッキリとうつった存在に関しては、この世界に当たり前に居るものではないか、ということです。
ただ人間の目に見えなかったりするのは、世界を認識している人間が「存在するわけがない」あるいは「存在してほしくない」と思い込んでいるだけに過ぎないからではないでしょうか。ひとたび脳が「居ない」と認識すれば、そこに何が居たとしても何も居ないんです。いわゆる人間の「霊感」というのは、この度合いだと思うんです。だから心霊写真や心霊映像の番組で「居るはずのない」とか「この世のものではない」といったお決まりのセリフを聞くと、それは人間の勝手な基準なのではないかと思ってしまうんです。逆に目で見えているのにカメラにうつらないなら、それこそ「この世のものではない」と思います。言い方を変えれば人間が「この世のもの」だと思い込みさえすれば、そこに居るのがどのような存在であれ、あるいは何もなかったとしても、そう認識されてしまうのではないでしょうか。
さて、こういったカメラにうつった怪異を嘘や機器の不調の一言で片付けてしまう方々に対して、改めてお伝えしたいことがあります。
貴方が見ている世界が何よりも正しく信頼できるという証拠は、どこにもありません。
貴方が日常の中で当たり前に目にして、接しているものは本当に貴方の認識通りの存在ですか。
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