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ヒトコワ

マチノスケさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

あの日みたいに
長編 2025/01/01 21:23 1,211view

 思わずそんな説を信じたくなるような。

 信じずにはいられなくなるような、そんな私の体験です。

 始まりは夢です。夢の中で、私は何もない白い空間に一人で立っています。いや、もっと正確に言うのなら……何もないんですが空間全体に揺らぎというか波のような模様があるんです。うまく言い表せないけど幾何学模様というか、万華鏡を覗いた時に見える景色をぼやかして白黒にしたような……そんな身体の平衡感覚が狂いそうになるような模様です。何か起こるわけでもなく何の音も聞こえない、静かな空間。でも……いやだからこそ、そこにいるだけで不安になるような空間でした。

 そして、そんな空間でどうしたものかと辺りを見回していると──
 

 いつの間にか女の子が立っていて、私の方を見ていることに気づくんです。

 その子は私が通っていた中学校の制服を着ているんですが、顔の部分だけ何かで塗りつぶされたように黒くなっていて見えないんです。顔が分からないし、全体的な雰囲気からしても私はその子に見覚えがなかった。

 その子は私が気づくと、ひたすら「あの日みたいに……」と言ってくるんです。何度も何度も。それしか言ってきません。その声にも、聞き覚えはなかった。「あの日みたいに……」のあとにも何かを続けて言っているようなんですが、その部分になった途端に声がくぐもって聞こえなくなってしまいます。繰り返されるその声は私の頭の中で反響し、苦しくなって夜中にベッドから飛び起きるのです。その女の子は日を追うごとに近づいて来て、「あの日みたいに……」という声も大きくなり、はっきりと聞こえるようになっていきました。でもそのあとの部分は、相変わらず聞き取れないままでした。
 そんな夢を突然に、しかも毎日見るようになりました。私は夢を見てから、ある種の強迫観念のようなものに囚われたんです。「何かをしなければならない」と。でも……それが何なのかは、その時は分かりませんでした。なんで夢を見るようになったのかも、何をすればいいのかも分からなくて。だから私にとっては「ただ怖くて鬱陶しい夢」でしかなくて。色んなことが落ち着いてきて、やっと一人暮らしの幸せな人生を謳歌できるようになった時に、なんで私だけこんな目に合わなくちゃいけないんだって。

 私は恐怖と苛立ちでおかしくなりそうでした。

 心の中で夢にいる存在に訴えかけます。

「あの日」っていつのことなんだ。

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