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心霊

きりはらさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

後悔の夜
長編 2025/01/01 10:38 660view

Aの恐怖が伝播し、全員が叫びながら半狂乱で家を飛び出す。Aは恐怖に駆られてBとCを押し退けると、一目散に車へ走り込んだ。エンジンをかける手が震え、そこにCが乱暴に飛び乗ってくる。

「早く出せよ!早く!早くしろって!」
「うるせえよ!今やってっから待ってろや!」

怒鳴るCと応酬するA。叫び声の余韻を振り払うように、Aはアクセルを踏み込んだ。車は急発進し、荒々しい音を立てながらその場を後にした。

その頃、3人を送り出したDは、一人暮らしの部屋でぼんやりと雑誌を読んでいた。何度か4人で肝試しへ行ったり、女の子も連れて行ったりしたが、どうも楽しめなかった。だから今回はパスしたのだが、結局のところ、一人で過ごす時間も同じように退屈だった。いつ帰ってくるのだろうかと考えながら、適当に雑誌のページをめくっていると、不意に引き戸の窓が「ガラガラ」と音を立てて開いた。

「え?」

あり得ない音に驚いて顔を上げると、窓の外から男が入ってきた。窓枠を乗り越えてきた中年くらいに見えるその男は、生気のない目をしているが、同時に何か激しい怒りが伝わってくる。

「……だろ」
「え?え?」

「……ただろ」

理解できない状況にDは雑誌を読んでいる体勢で男を見る。男は窓際に立ったままDをじっと見て、何かを問いかけるように低く呟いた。

「今、来ただろ」

その瞬間、Dの脳裏に3人が向かったあの曰く付きの家のことが鮮明に浮かび上がった。

「今、来ただろ。今、来ただろ。今、来ただろ」

抑揚のない、だが怒りを含んだ声で、男は繰り返す。

「俺は行ってねえよ!」

Dはすがるような思いで否定した。実際に自分は行っていないし、嘘をついているわけでもない。それでも、この答えによって何が起きるのかは全くわからない。早く出ていってくれ、と心の中で祈る。

「また、来るわ」

男は低い声でそう言い残し、窓枠を乗り越えて外へ出ていった。だが、安堵よりも恐怖が先に立ち、男がいた窓から目を離すことができない。ただ呆然としていると、突然背後で玄関の扉がバンと大きな音を立てて開いた。その瞬間、Aの声が部屋の中に響き渡る。帰ってきて早々、慌ただしく騒ぎ立てるAに、Dは食ってかかった。

「おい、お前ら何したんだよ!今、変な男がうちに来たんだよ!しかも窓からだ!」

「D、お前、何言ってんだ?」

「俺の部屋、2階だぞ?ベランダもないのにどうやって入ってくるんだよ!」

Dは必死に訴える。

「しかもそいつ、『今、来ただろ』って言ってきたんだよ!お前らのことだろ!」

「わ、わかんねえよ!何もしてねえって!ただ、いつもみたいにAがタバコを置いてきただけ……」

「うるせえんだよD!今それどころじゃねえんだよ!」

Aがあまりにも狼狽えているので、Dは困惑し、同時にあることに気づく。CはDの様子を見て、力なく呟くように言った。

「俺たち、Bをあの家に置き去りにしちまったんだ……」

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