ポラロイドの呪縛
投稿者:ねこじろう (153)
それからすぐに歩道脇に生えた雑草のところに駆け寄り、夢中に写真を撮り始める。
その様子を背後から母親が眩しげに眺めながらこう呟いた。
「すみませんねえ、、
あの子小さい頃からずっとあんなで、、
以前は一つ上のお兄ちゃんがいつも側についてくれて面倒みてくれてたんですよ。
あのカメラもお兄ちゃんがあの子の誕生日にプレゼントしたものでね、、
でも半年前にバイク事故で亡くなってしまって、、
ううう、、、
恐らくあの子、あなたのことを亡くなったお兄ちゃんと思ってるみたいですごく慕ってるようで。
本当に勝手なお願いなんですが、これからもあの子のこと気にかけていてくれませんでしょうか?」
そんなこと言われてもなあと思いながらも、俺は請うような母親の顔を目の当たりにすると「ええ分かりました」と思わず言ってしまい愛想笑いをした。
そんなロイドくんだが、いつの頃からか姿を見せなくなる。
母親と外出する姿も見られなくなった。
それは高校最後の夏休みの頃のことだった。
俺は受験も控えていてロイドくんのことはあまり考えることが出来なかったが、それでもどこか頭の片隅では気にかけていたと思う。
そしてちょうど夏休みがあけた日のこと。
塾で帰宅が遅くなった俺は薄暗いアパートの渡り廊下を歩いていた。
すると、
突然背後に気配を感じたかと思ったら、誰かが服の裾をぐいっと引っ張る。
驚いて振り向くと、そこにはロイドくんが立っていた。
ただいつもだと笑みを浮かべている顔が、どこか悲しげな感じだ。
どうしたの?
と言いながら背後に向き直る。
だが彼はただ悲しげな顔のまま立っているだけだ。
しばらく俺は彼と向き合っていたが埒が明かないので「悪いけど行くね」と一言言ってからその場を離れた。
そしてそんなことが数日続いた、ある日の夜のこと。
和室の間の床についてから薄暗い天井を眺めながらここ最近のロイドくんのことを考えていると目がさえ、しばらくの間眠れなかった。
そしてようやくうとうとしだした頃のこと。
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