よく見ると12階の扉達は全てがそうなっていた、きっと業者などがいちいちカードキーを持ち歩く手間を省くための処置だろう。
俺は助かったと肺に詰まった息を吐き出した、その息は目の前のおっさん幽霊の首元に吹きかかった訳だが。
そう、俺はカードキーを持ってきていなかったのだ。
正確にはホテルの清掃用マスターキーというのは階層ごとに分けられており、この12階の扉を開けるためには12階のマスターキーが必要なのだ。
それをどうしたものかと苦心していたが、取り越し苦労だった。
そんな俺の苦労も知らず、鎖はその幽霊が吸い込まれる部屋の扉の前に立ちながら問いかけてくる。
「本来この霊道はこのままこの廊下を真っ直ぐすすんで、そのままビルを突き抜けて空中を進んでいくものだった」
「…………は?」
「でも、今は違う、こうしてこの部屋の中に吸い込まれていくの……どうしてだと思う?」
「え……いやぁ…」
「そんなの知るか」と心の中でボヤいていると答えを分からなそうにしてる俺を尻目に鎖は扉のドアノブを握りながらこちらに向き直った。
「これが答えよ」そう言って鎖は勢いよく扉を開いた。
俺は扉の向こう側の景色に、言葉を、思考を、今まで鎖と築き上げた死者の概念を奪われた。
カタツムリ。
カタツムリの裏側を見たことはあるだろうか。
カタツムリというのは普段、家やコンクリートの壁に張り付きそこにあるカルシウムを口で削り取るようにしてその背中の殻を形成する栄養源としている。
そのカタツムリをガラスか何かの上に乗せ、裏側を見るとさぞ気持ち悪いものが見れるのだが。
それがあった。
客室の窓には何か大きいものがベッタリと張り付いてその大きな口をガラス越しにこちらに向けてモゴモゴと動かしている。
まさにカタツムリの裏側のような光景だった。
俺はそれを見てハッと気がついてしまった。
「こ、これ!!鎖!!」
「そうよ、壁に張り付いてたアレの裏側」
























けっこうこわかったです。
さすがに44Pもあると途中で挫折しました。
ぜひ今度5Pくらいの短縮版を書いてください。
怖くはない。だが悪くはない。
しんれいかいきみすてりーふうの、とあるぼうけんたん、ちょうへん。
主人公が俺っ娘だとは、ある一節まできがつかなかった 。
いつも空いている席の正体に続く、二作品目読ませていただきました。ジャンルとしては、心霊というより田舎・伝承系でしょうか。
師匠シリーズ、なつのさんシリーズのように登場人物に統一性があり、続編小説を読んでいるようでとても面白いし、なるほど、と思える話でした。次の話も楽しみにしています。
一作品目の話と、こちらの話は、朗読させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
俺は高2なのに1コ上の石野さん大学生なんです?