だが俺はハッと不味い事に気がついた。
「なぁ鎖、12階来たがってたのは分かったけど、見たいのは廊下か?それとも部屋の中か?」
「両方よ」と小さく答える。
やはり不味い。
焦っている俺に構わずエレベーターは12階へ到着した。
ゆっくりと扉が開かれる。
俺はその光景に目が点になってしまった。
「なんだ……この人の数」
開かれた2号棟12階の光景は、廊下を埋め尽くす人の群れだった。
所狭しと様々な人間が列を作っていた。
呆然としてる俺とは裏腹に鎖は「知っていた」と言わんばかりに平然としていた。
「行くわよ」と言うと鎖は歩き出し、その人ごみの中に消えていった。
人混みの中へ消えるという表現がまさに正しいのだが、これを聞いた際普通の人間が想像するイメージと俺が実際に目の前で見た光景は紙の表と裏が全く別の概念であるように、その言葉の意味は全くもって乖離していた。
鎖は文字通りその人混みの中を、人の背中を、通り抜けたのだ、すり抜けたかな、物質透過、通り抜け人間、すり抜け人間、どれも言いたい事は同じだ。
それを見て俺は「あ、これ全員幽霊だわ」とあっさり自己解決し、夜道に蜘蛛の巣が顔にかかった時のような身振りをしながら鎖の後に続いた。
霊体をすり抜ける時のこの怪しい感覚は未だに慣れないなと身震いしていると鎖が「見なさい、アレを」と前方を指さした。
前方を見る、すると俺たちが今まですり抜けてきた霊道は不自然に横のとある客室へ曲がっていたのだ。
曲がっていた、というより、どちらかと言うと。
吸い込まれている、に近かった。
「なんだ?あの部屋になんかあるのか?」と横の鎖に聞くと鎖は「答えよ」と小さく答える。
そこで俺は「あっ」とエレベーター内で焦っていた原因を思い出した。
慌てて鎖に「あ、あの〜鎖さん」とミスを上司に報告する時みたいになっていると鎖はズカズカとその部屋へ近ずいた。
「あら、空いてる」
その客室はU字ロック型のドアチェーンが扉に引っかかっていて、鍵はかかっていなかった。

























けっこうこわかったです。
さすがに44Pもあると途中で挫折しました。
ぜひ今度5Pくらいの短縮版を書いてください。
怖くはない。だが悪くはない。
しんれいかいきみすてりーふうの、とあるぼうけんたん、ちょうへん。
主人公が俺っ娘だとは、ある一節まできがつかなかった 。
いつも空いている席の正体に続く、二作品目読ませていただきました。ジャンルとしては、心霊というより田舎・伝承系でしょうか。
師匠シリーズ、なつのさんシリーズのように登場人物に統一性があり、続編小説を読んでいるようでとても面白いし、なるほど、と思える話でした。次の話も楽しみにしています。
一作品目の話と、こちらの話は、朗読させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
俺は高2なのに1コ上の石野さん大学生なんです?