「この通路を真っ直ぐ行くと2号棟の従業員用エレベーターに乗れるよ」と鎖に伝えると鎖は「こんな汚い所さっさと抜けたいわ」と言ってカツカツとヒールが床を弾く音を響かせながら俺の前を歩いた。
途中、複数人の従業員達が向かい側から一気にわらわらと歩いてきた。
そういえばそろそろ社会一般的には昼休憩の時間だなと思った。
すれ違う際にお互い顔は知らない仲なのにも関わらず俺たちに向かって「お疲れ様です」と挨拶してくる。
この職場の常識だ。
俺は作った笑顔で「お疲れ様です」といつも通り返したのだが、鎖はというと。
ガン無視である。
レッドカーペットを歩くハリウッド女優バリのモデル歩きをかますメイドを尻目に、すれ違った人達が「あれぇ?」みたいな顔をして何人かが振り向いてる所を見た俺は、冷や汗が出た。
慌てて鎖を止め、リネン用のコンテナの隙間に連れ込む。
鎖本人はというと、自分がなんで呼び止められたか全く分かっていない様子だった。
「なーにーよ」
「なーにーよ……じゃねぇ!!お前挨拶されてんだから返せよ!!」
鎖は眉をひそめ「なにを言っているの貴方は」と言わんばかりの疑問顔をこちらに向けている。
あーなるほど、こいつにとってこれは全く理解できない概念なんだ、これはちゃんと教えてやらねばなるまい。
「お前は今従業員なんだよ!従業員同士は顔が合ったらお疲れ様ですとか言うもんなの!分かったか!!」
「あら、どうして私の言動を他人に強要されなくてはならないのかしら……彼らがそう言いたいのなら好きに言わせればいいじゃない」
あダメだコイツ、働いた事ねえから社会の常識通じねぇ。
そんな呆れ返ってる俺をよそに鎖は鼻高々に「良かったわね、貴方も次からそうなさい」と言って腰に手を当てながらゲームの裏技を教えてくる友人のような得意げな顔をしていた。
もしこの一件がバレたらこの人に強要されましたって供述しようと俺は心に誓ったのだった。
従業員用エレベーターへ着くと12階を押した。
エレベーターが上昇を始め程よい負荷がかかり始める。
エレベーター内は俺と鎖だけだった。
「あら、こっちのエレベーターは12階で降りれるのね」
鎖単独での調査で難所となっていた部分がこうもあっさり解決したので鎖は気分が良さそうだった。
























けっこうこわかったです。
さすがに44Pもあると途中で挫折しました。
ぜひ今度5Pくらいの短縮版を書いてください。
怖くはない。だが悪くはない。
しんれいかいきみすてりーふうの、とあるぼうけんたん、ちょうへん。
主人公が俺っ娘だとは、ある一節まできがつかなかった 。
いつも空いている席の正体に続く、二作品目読ませていただきました。ジャンルとしては、心霊というより田舎・伝承系でしょうか。
師匠シリーズ、なつのさんシリーズのように登場人物に統一性があり、続編小説を読んでいるようでとても面白いし、なるほど、と思える話でした。次の話も楽しみにしています。
一作品目の話と、こちらの話は、朗読させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
俺は高2なのに1コ上の石野さん大学生なんです?