2号室、そこは普段お客様に貸出している客室なのだが、どうして従業員の俺らがそこで休憩するかというと、有り体にいえばこのホテルにはメイド従業員用の休憩室が用意されていないのだ。
なので清掃係の我々は売れていない部屋に菓子やらおにぎりやらパイプ椅子やらを持ち込んで休憩しているわけだ。
こういう部分ひとつ取ってもやはりこのホテルがケチであるという事がよく分かるのだった。
「お疲れ様です」
「あら、お疲れ様…渡辺さんここのバイトは慣れた?」
「あーまぁ…少しは」
在り来りな返答を済ませてパイプ椅子に座る。
目の前には俺用にと小袋の包装された菓子が数個置かれていた。
女性しか居ない女社会のこの職場の様式美と言えよう、俺も仕方なく一応買ってきたバームクーヘンを作った笑顔で「どうぞ」と先に休憩していた先輩3人の目の前に差し出す。
はっきり言って面倒なのだが、俺だけもってこないとなると、先輩達の陰口の槍玉に上がってしまいそうで、それはそれで面倒なので仕方なくご機嫌取りをするのだった。
「それにしてもあれね〜、古田さんの清掃した部屋って本当に雑よね〜」
「あれでしょ〜、また息子の嫁さんと教育方針が合わないだので喧嘩したって言ってたわよ〜」
目の前のパートおばやん2人がこの場に居ない人間の愚痴を始める。
この職場では見慣れた光景だ。
はっきり言って高校生アルバイトの俺にとってそのトークテーマはこないだの数学の授業でやっていた三角関数の方程式と同じくらい興味が無いのだった。
テーブルを挟んで目の前に座る石野(いしの)さんを見やる。
おばやん2人の愚痴にはさらさら興味が無いようで会話ガン無視でスマホを弄っていた。
なんてマイペースなんだ、尊敬してしまう。
石野さんは俺より1年先輩の女子大生で基本的に必要最低限な事しか喋らないのだが仕事の出来は早くて完璧という、俺がこのバ先で最も尊敬してる人だった。
「あら…そういえばあそこのマンション、もう完成したみたいね〜」
「あらほんと、でもあそこ1億なんでしょ〜、どんな金持ちが買うのかしらね〜」
おばやん達は1度会話が途切れると少しして窓から見える分譲マンションにあれこれ言い始めた。
何やらその分譲マンションの話が白熱し始めたのか、おばやん2人はイスから立ち上がり窓の外を指さしている。
「あら…確かあそこの高校が渡辺さんの通ってる所よね〜」

























けっこうこわかったです。
さすがに44Pもあると途中で挫折しました。
ぜひ今度5Pくらいの短縮版を書いてください。
怖くはない。だが悪くはない。
しんれいかいきみすてりーふうの、とあるぼうけんたん、ちょうへん。
主人公が俺っ娘だとは、ある一節まできがつかなかった 。
いつも空いている席の正体に続く、二作品目読ませていただきました。ジャンルとしては、心霊というより田舎・伝承系でしょうか。
師匠シリーズ、なつのさんシリーズのように登場人物に統一性があり、続編小説を読んでいるようでとても面白いし、なるほど、と思える話でした。次の話も楽しみにしています。
一作品目の話と、こちらの話は、朗読させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
俺は高2なのに1コ上の石野さん大学生なんです?