脳内マリーアントワネットには何を言っても通じそうになかった。
俺は「もういいや」と説得を諦めるとあの男から押し付けられたルームサービスを思い出しゴミで散らばる床に気を配りながらデスクの上へお盆を置いた。
「ほい、これルームサービス……何頼んだんだ?」
鎖は窓の外を向いて双眼鏡を覗き込みながら「……ひつまぶし」とボソッと答えた。
「な!?……ひ、ひつ」
嗚呼、現実というのはどうしてこうも残酷なのだろうか。
俺の今日の昼食なんて母さんが朝寝ぼけながら握った具なしおにぎりだぞ。
何だこの差は。
「まったく、注文してから随分待たされたわ……扉の前で立ち往生でもしてるんじゃないかって思ってた所よ」
「は……はは」
乾いた笑いしか出なかった。
鎖は最後に双眼鏡を覗いてなにかをメモ帳に書き記すと椅子を立ち、デスクへとやってきた。
席に着くと鎖は椀のフタを開き中のひつまぶしをおもむろに数口食べた。
めちゃくちゃいい匂いがふわーんと室内に広がる。
俺の腹もぐうと鳴る。
いいなぁ。
「はぁ……」
しかし鎖は俺の羨望の眼差しを背に浴びながらも、数口食べてため息を着くと箸を置いてしまった。
「酷い味ね…身に全くタレが染み込んでいないし、炭火を使わずガスで調理しているわ」
鎖は口元をハンカチで拭くとデスクを立ち上がりまた窓際の席に戻ってしまった。
この話は怖かったですか?
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けっこうこわかったです。
さすがに44Pもあると途中で挫折しました。
ぜひ今度5Pくらいの短縮版を書いてください。
怖くはない。だが悪くはない。
しんれいかいきみすてりーふうの、とあるぼうけんたん、ちょうへん。
主人公が俺っ娘だとは、ある一節まできがつかなかった 。
いつも空いている席の正体に続く、二作品目読ませていただきました。ジャンルとしては、心霊というより田舎・伝承系でしょうか。
師匠シリーズ、なつのさんシリーズのように登場人物に統一性があり、続編小説を読んでいるようでとても面白いし、なるほど、と思える話でした。次の話も楽しみにしています。
一作品目の話と、こちらの話は、朗読させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
俺は高2なのに1コ上の石野さん大学生なんです?