「す、すまないが……そしたらこれは君が届けてくれ!!頼んだよ!!」
ルームサービスの男の目に光が宿り、俺の目から光が消えた。
お盆を持たされた俺はルンルンスキップで廊下を戻っていくルームサービス男をただただ死んだ魚の目で見届ける事しか出来なかった。
5号室の扉を前に、俺はまるで地獄の門へマックフライドポテトを届けに来たUberEATS配達員のような心境になっていた。
果たして閻魔様はチーズバーガー派か照り焼きバーガー派か、大穴はえびフィレオだろうなと謎の思案に脳のリソースを割きながら俺は5号室のチャイムを鳴らした。
「おはようございます、清掃係です」
扉に向かって気持ち高めのトーンで業務マニュアルを投げかける。
こんな女らしい声、柄に合わない。
しばらくして「入りなさい」と中から若い女性の声が帰ってきた。
この声なんか聞いた事ある気がするなぁとぼんやり思いながら俺はカードキーで鍵を開けた。
「おはようございます、清掃にまいりました」
扉の中に入る。
スイートルームと言うだけあって中はとても広く内装は豪華だ。
ただお客様の私物が所狭しと色んな所に配置されており、広いのに何故か手狭に感じてしまうという怪奇現象がその部屋には起きていた。
床にはシュークリームが入っていたらしき包装やら、プリンが入っていたであろうカップやら、とにかくスイーツのゴミが散乱している。
スイートルームの看板を背負った悲しきモンスターと成り果てたその部屋を前に心の中で「安らかに眠れ」と呟きながら俺はお客様はどこだろうと周りを見回した。
すると奥の窓際に椅子があり、そこに1人の女性が座っていた。
その女性はゆっくりとこちらに視線を向けると一言放った。
「あら、メイド服…案外似合ってるじゃない」
俺はその女の顔を見てザリガニが水鉄砲食らったような顔をしてしまった。
連日先輩達をざわつかせ、石野さんをほとほと疲れ果てさせ、しまいにはパートのほぼ全員からNGを食らうほどの問題客。
その正体は1週間ほど前から学校を休んでいた鎖だった。

























けっこうこわかったです。
さすがに44Pもあると途中で挫折しました。
ぜひ今度5Pくらいの短縮版を書いてください。
怖くはない。だが悪くはない。
しんれいかいきみすてりーふうの、とあるぼうけんたん、ちょうへん。
主人公が俺っ娘だとは、ある一節まできがつかなかった 。
いつも空いている席の正体に続く、二作品目読ませていただきました。ジャンルとしては、心霊というより田舎・伝承系でしょうか。
師匠シリーズ、なつのさんシリーズのように登場人物に統一性があり、続編小説を読んでいるようでとても面白いし、なるほど、と思える話でした。次の話も楽しみにしています。
一作品目の話と、こちらの話は、朗読させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
俺は高2なのに1コ上の石野さん大学生なんです?