いけず石

それにしても、『親切石』───親を切る石。
Bの話がふと頭によぎりました。

『実の親子やったらともかく、義理の親の遺髪欲しがる人なんて普通おらへんし。』

あの話は元々、嫁姑という義理の家族関係ではなく、実の親子の話ではないでしょうか。

実の親子であれば遺髪が欲しいという要求も幾分違和感が無いでしょうし。

血の繋がった親と子、そういう関係ならば、なおの事、生まれてから亡くなるまでの付き合いで恨み辛みが溜まることもあると思うのです。

　実は数年前にBは会社の上司に「腰が痛い。病院行く。」と電話したのを最後に連絡が取れなくなり、後日、住んでいるアパートで亡くなっているのを発見されました。

Bの実家は京都にあるのですが、学生時代から親との関係があまりよくなかったらしく、家から飛び出す形で大阪の会社に就職したそうです。

その時はコロナの影響で、通夜や葬式はBの身内だけで行われました。

今私は違う会社で働いているのですが、いつか一度線香をあげに行きたいと思っています。

・・・思っているのですが、もし彼の実家の前にいけず石が置かれていたら、私はきっとBと、彼の遺族に対して大変失礼な想像をせずにはいられないでしょう。

　ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。