奇々怪々 お知らせ

心霊

きのこさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

事故物件
長編 2024/12/20 11:45 2,869view

 人ならざるもの達は、怯おびえたりして意識を集中してしまうと、自分の事が視えているんだと気付いて、憑いてくる事があるのだ。私も視えてしまった時は、気付かないふりをしたり、気を逸そらすためにくだらない事を考えたりする。

 その子供が、普段から視えているのかどうかは分からないが、そのことをちゃんと理解しているのだろう。だからこそ、押し入れにいたおじいさんと、おばあさんに気付かれないように、家の外に出てから、小さな声で彼に伝えたのだ。

 そして多分両親には、何も言わなかったと思う。

 ———それにしても、心霊的なことに関わったことがなかった彼は、相当恐ろしい思いをしたに違いない。

 大人に言われると、冗談かな? と流せるかもしれないが、穢けがれていない小さな子供に真顔で言われると、もう信じざるを得ない。彼はその日からずっと背後が怖くて、誰かに話したかったそうだ。

 ただ、そんな何の根拠もない事を話しても馬鹿にされそうな気がして、仲の良い友人にも話せなかったと言っていた。それに、もしかすると、男の子に告げられて、本当に人ならざるものがいると信じたからこそ、言わない方がいい、と感じたのかも知れない。

 口に出すと、引き寄せてしまう事もあるからだ。

 そこへ運命の巡り合わせか、偶然私に再会し、霊が視えると連想させるような事を口走ったので、飛びついたらしい———。

 私は何故か、そういう場面に出会すことが多い。

 霊感があることを知らないはずの人達に、心霊的な相談をされるのは、よくある事だ。そして、ファミレスを出た後、

「俺の後ろ、なんか憑いてない?」

 と不安げな表情かおで訊かれたが、

 彼の近くに立っても特に何も感じなかったので、

「別に何にもいないよ」

 と背中を強めに2発叩くと、彼は安心したのか、元の明るい表情に戻った。

 不動産関係の仕事をしていると、怪奇現象が起こるとか、幽霊が出たなどのクレームは珍しくないそうだ。

 彼の会社では、人が亡くなった時だけでなく、心霊的なクレームが起こった場所も事故物件と呼び、酷い場所は問題が起こる前に、手放すようにしているらしい。

 そうしないと、後でトラブルになったりして、実際に会社が訴えられて裁判になった事もあるそうだ。

 たしかに私達が知らないだけで、毎日たくさんの人が自宅で亡くなっている。悲しい事だが、亡くなって随分経ってから発見されるのも、別に珍しい話ではないと聞いた。

 警察官をしている友人と、孤独死の話になった時、

「そんなん毎日だよ。早く見つかればいい方だ」

 と、事もなげに言っていた。
 
 1つの警察署に、1日に何件も遺体発見の連絡が入るらしい。

 彼にとっては当たり前のことで、私達がテレビや新聞で知るのは、ほんの一握りの事件だけなのだろう。

 内装業をしている親戚も、アパートの住人が退去した後、壁紙を張り替えていると、部屋の中に男の子が座っていた事があると言っていた。

 もちろん、生きている子供ではなかったらしい。

 なぜ親戚がそう思ったのかと言うと、後ろが透けて見えていて、子供が現れた瞬間から、部屋の中が異常に寒くなったそうだ。そして、一度声をかけてみたそうだが、何の反応もなかったと言っていた。

9/10
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。