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呪い・祟り

えんたーさんどまんさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

由紀子の箱
長編 2024/11/25 14:38 525view

助手席に座ってカーナビの起動を待つ間に、確かに何か嫌な臭いがしてきた。
「…臭うよな?」という不安げな広町の問いかけに、「微かにだけど、確かにするな…。なんだろう…?すえたような…カビ臭いような…」と顔をしかめる。
「買ってから徹底的に掃除もしたし、ゴミも置いてないのに…。芳香剤も除臭剤も全く効かないから、窓開けて臭いを逃がすしか方法がないんだよ。参るよほんと…」と、ほとほと困り果てた様子だ。

暫くしてカーナビが起動し、広町が「これなんだけど」と、カーナビの自宅アイコンをタップする。
画面には住所が表示され、そこにピンが立った。
ここで違和感を感じる。
どう見ても建物のような表示がなく、畑?田んぼ?のような場所のど真ん中にピンが立っているのだ。

さらに、広町が表示された住所をスマホのGoogleマップで開いて見せてきた。
見比べてみてくれ…と言われ見てみると、ピンが立っているそこは、鬱蒼とした竹林だった。
おそらく田んぼ一つ分くらいはあるんじゃないかと思えるほどの広さだが、どの角度から見ても建造物のようなものは見当たらない。

「航空写真で見ても、ここに家なんてないんだよ。…でな。Googleマップって過去の画像も見れるだろ?それで遡ってみたんだけど…」
と、広町はスマホで画像の年月日を遡った。
9年前が一番古いが、今と変わらない竹林があるだけだ。
その後、7年、6年、4年、3年…と続く。
周りの風景には変化があるものの、竹林はずっと同じ様相を呈している。
「…で、2年前の画像がこれな…」広町は渋い顔をしてこちらに画面を向けた。

竹林を少し入った場所に、夫婦と思しき男女が、しゃがんだ状態で後ろを向いて何かをしている姿、その手前に、制服を着た中学生くらいの女の子とランドセルを背負った男の子が立ち、横並びに手を繋いでこちら側を向いていた。
顔にはモザイクがかかっていて見えないが、画面の向こうからこちらを見ている…そんな感覚が背筋を冷たくさせる。

「うおぉ…」俺は思わず声を漏らしていた。
八潮を見ると、眉間にしわを寄せてじっと画像を見つめている。

その後、10ヶ月前と現在の画像にはその人物たちは写っておらず、どうやらおかしいのは2年前の画像のみのようだ。

「でさ、お前らがいいなら、今からここに行ってみたいんだけど…」
広町が俺たちの顔色を伺うように言う。

俺はノリ気で「いいね!行こう!」と即答したが、八潮はやはり腕を組んで考えているようだった。
だがすぐに、「わかった。行く」と答える。
…こんなにも素直な八潮はおかしい。やっぱりなにか変だ。

「ただし、……奥さんとナナちゃんには家で待っていてもらう。…そんで、俺が助手席に乗る」

なるほど。後部座席に何かしら感じるんだな…。
俺は直感的に理解し、嬉々として後部座席に移り、空いた助手席に八潮が乗り込む。

広町はそんな俺たちのやりとりを見て、「お前ら、高校の頃から関係性が変わってないんだな」と笑うと、リサちゃんに向き直り、「悪いな。ちょっと見たら帰るから」と声をかける。
「気をつけてね…」リサちゃんも心配そうに広町を見つめた。

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