鏡の監獄
投稿者:セイスケくん (28)
短編
2024/11/18
14:54
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彼はその顔と目が合った瞬間、恐怖のあまり発狂寸前となり、慌てて救出された。
また別の被験者は、「自分の身体が消えていく感覚」を味わったという。
鏡の中で身体の輪郭が溶けるように消え、最終的には自分が存在しないかのような錯覚に囚われたというのだ。
心理学者たちはこれを「鏡像自己認識」の限界と説明する。
脳が無限の反射や視覚情報を処理できず、自己認識の崩壊を引き起こすという。
しかし、もう一つの説明が囁かれている。
それは「魂の監禁」だ。
古来、鏡は魂を映し出し、閉じ込める力を持つとされてきた。
全方向を鏡に囲まれることで、自分自身の魂が引き裂かれるのではないか、と。
「鏡の監獄」に関する実験は、現在すべて凍結されているとされる。
しかし、その装置や鏡面球体は、研究機関のどこかに今も眠っているという噂が絶えない。
時折、都市伝説好きな者が興味本位で鏡の部屋を模倣したり、鏡を用いて閉鎖空間を作るが、その中で異常を訴える者は少なくない。
「鏡に囲まれた空間では、自分だけが映ると思うだろう?」と、ある心理学者は語ったという。
「でも、本当に映っているのは君だけなのか? 鏡の中にいるものが、君と同じだと誰が保証できる?」もし完全鏡張りの部屋や球形の鏡面空間に入る機会があったら、やめておくことを強く勧める。
その中に映るのは「自分」ではない何か――そして、一度でも目が合えば、それが本当の君になるかもしれないから。
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