参呪箱

血も出ている様子はないし、最初はびっくりしたがすぐに作りもんだろうと思ったらしい。
手に取ってみると、何やら温かい。
本当に生きた人間の体温くらい。

まあでもその当時は真夏だったし、熱がこもったんだろうと思っていた。

宝石でも入ってるのかと思っていた叔父は、ちょっとがっくりした。
どうせ大学生とかが悪ふざけで置いたんだろうな、って程度に思ってた。

が、翌日仕事から帰ると、部屋の中がものすごい悪臭で満たされていた。
夏場だったし、生ごみか？と思ったが、昨日ゴミ出ししたしそのはずはない。
冷蔵庫が開いている様子でもないし、おかしい。

しかも蠅が舞っている…

まさか、と思い放置していた箱を見ると、作り物だと思っていた手が、腐っていた。
手の甲から骨が見える。蛆も湧いて、かなり気持ち悪い。

マンションの8階に住んでいるのだが、迷わず箱を窓から放り投げた。

怪談あるあるの、捨てたはずなのに戻ってくる、ということはなかったそうだ。

この頃から、目に見えて叔父の様子がおかしくなった。
週1回は会ってたのに、連絡も来ない。

しかも、叔父の勤めている会社から、
緊急連絡先に設定していた我が家に電話がかかってきて、
「〇〇さんがここ1週間出社してこないのですが…」という内容。

父と二人で叔父の様子を見にマンションに行くと、

鍵は開いていたが叔父はいなかった。

数日後、叔父は傷害事件で逮捕された。

彼女の手首を包丁で切りつけたらしい。
彼女に逃げられた直後、街中に行き見知らぬ女性の手首を切りつけたらしい。

この話は、面会の時に少ない時間で聞いた話。

「あの手を見た日から、無性に女の手が欲しくなったんだよ。
　ずっと理性で抑え込んでたけど、どうしようもなくなっちまって。
　彼女には申し訳ない事をした。傷が残らないといいんだが…
　今も女の手が欲しいと思う時がある。
　たとえ親族でも女は連れてこないでくれ」