ついてくる女性
投稿者:たち (9)
それから数年が経ち、無事に大学を卒業し、就職をしたある日のこと。
母から連絡があり、父が漁師を辞めると聞きました。
内心、少し安心した部分もありましたが、
「いきなり、どうしたんだろう?」
と思い、今度帰省した時、父に聞くことにしました。
数ヶ月後、久々に帰省した私は父にさりげなく、何故漁師をやめることにしたのか聞きました。
「どうして、いきなり辞めることにしたの?俺としては父さんも歳だし、安心したけど…」
父は少し何かを考えてるようでした。
そして、静かに喋り始めました。
「うーん…まぁ、お前も大人になったしな。言ってもいいか…。大人になったからこそ、信じてもらえないかもしれないがな。」と言いました。
「実は、お前も気付いてると思うが俺も父さんも周りから避けられててな。別にそんなことは問題じゃない。俺も父さんも他人のことはきにしてなかった。」
私は、
「避けられてるのは感じてたけど、気にしてなかったんだ。」と少し笑いながら言いました。
「ああ、別に気にしてない。じゃあ、何故漁師を辞めようと思ったか。簡単に言うと、身の危険を感じたから…かな。」
海で仕事をしている以上、危険はつきもの。そのことは理解していたつもりでした。
「何かあったの?」と訪ねると、父は、
「話すと長くなるけど…私達が避けられてきた理由というのが、私からしたら祖父。お前からしたら曽祖父の時の出来事が原因なんだ。」
父は続けて、
「曽祖父が漁師をしてた頃、当時結婚していたにも関わらず浮気をしてしまったらしい。相手が看護婦さんだったみたいなんだ。周りの漁師達がそのことに気づき始め、祖父は浮気相手に別れ話をもちかけたらしい。看護婦の浮気相手は納得せず、祖父に何度もよりを戻そうともちかけたが断られた。そこで思い詰めた浮気相手は海に身を投げたんだ。」
私は幼い頃の記憶が蘇り、
「昔、漁師の人達が話してたことはこれか。」
と幼い頃に聞いたワードの謎が解けました。
私は、
「そうだったんだ…全然知らなかったよ。けど、それと父さんが漁師辞めた理由と関係あるの?」と聞きました。
父は、
「ああ。実はその浮気相手が亡くなってから漁師達の間で変なことが起こり始めてな。というのが、漁に出る船の後ろを女性がついてくるということがあったんだ。」
私は、少し拍子抜けした感じで、
「えっ?幽霊ってこと?」
父は頷き、
「信じられないかもしれないが、そうなんだ。女性の霊が船の後ろ、波しぶきがたっているとこに浮いていて、船についてくるんだ。漁師の間でも、霊感がある人は見えて憔悴したり、漁師を辞めたりしたらしい。」
私は素直に信じることができなかった。
「そんな話、聞いたことないな…絶対に無い!と決めつけはしないけど…」と自分の中で色々と考えました。
父は続けて、
「お祓いをちゃんとやって当時は幽霊騒動はおさまったらしい。それから、我が家は周りから避けられるようになったんだ。
俺も父さんから聞いた時は信じられなかった。」
私は「父さんもそうだったのか。」と思い、話を聞いていました。
父が、
「父さんも昔、その霊の声を何度も聞いたらしい。昔から父さんに、海の上で私以外の誰かに声をかけられても後ろを振り向くなよ!と何度も言われた。」
確かに、祖父も父も私が幼い頃から同じことを言ってたなと思い出しました。
幼かった当時は、あまり気にもしてませんでした。
父は話を続けて、
「私も何度か1人で漁に出た時に、声を聞いたことがある。父の教えがあったから振り向くことはなかった。だか、ある日のこと。いつも通り漁に出ていたら突然、
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