ワタヌキ様
投稿者:やおよろず やお (6)
A県某所。
ここはど田舎で、みんなが想像するような村の集落って感じ。
山に囲まれてて、狸やら猪やら鹿やら猿なんて普通にいるくらい自然が豊か。
夜にはいつだって虫やらカエルやらの声がうるさいし街灯なんてほとんどない。
スーパーとか大きな街に行くには車で片道1時間半以上かかる。
そんなど田舎の私の地元には、語り継がれてる土地神様がいる。
その土地神様は「ワタヌキ様」って呼ばれていて、村の人たちでも限られた人しか行かない山の奥の社に祭られてる。
「ワタヌキ様」はかつて、この村が病や災害に見舞われた際、供物を捧げることでそれらから守ってくれていたらしい。
ただ、気性が荒い神様のため、子どもの頃は悪いことをしたら爺ちゃん婆ちゃんに「そんなことしてっと、ワタヌキ様に喰ってもらうぞ」って脅しに使われたりしてた笑
数年に一度、未だに爺ちゃん婆ちゃんたちは
白い装束を着て「ワタヌキ様」の奉納の儀を行ってた。
子どもは行っちゃいけないって言われて、どんな儀式をしてるのかはわからなかったけど
御供物は決まってその日とれた新鮮な魚や鶏、豚、鹿などの生き物。
大きければ大きいほど「ワタヌキ様」は喜んで数年間は村を守ってくれるらしい。
ただ、これにはルールがあるみたいで
奉納の儀ではお供物を祠の前に置き、祠を背にして取り囲むように舞を踊るんだそうだ。
その際決して振り返ってはいけない。
どんなに声をかけられても振り返ってはいけない。
「ワタヌキ様」と目が合うと供物にされてしまうそうだ。
儀式の終了は「ワタヌキ様」がお供物を食べ終わるまで。
子どもながらに不思議だなあ。
神様なんて見えっこないのに、しかも食べ終わるなんてどうわかるんだよって思ってた。
もし動物が食べられてるなら「ワタヌキ様」は熊かなんかじゃないのか?名前からしたらタヌキなのかなとか思ったりもしてたよ。
でね、本題はここから。
私の爺ちゃん婆ちゃんも「ワタヌキ様」の奉納に行ってたんだけどね。
私が小6の時かな。
「奉納に行ってくる。爺ちゃんたちが帰ってくるまで絶対に家にいろよ」
って爺ちゃんから言われてて
もちろんその言いつけは守ったんだけどね
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