消えた観光バスの話
投稿者:ねこじろう (150)
━いや、ちょっと待て。
それはおかしい、あり得ない!
と俺の心に疑念が湧き起こる。
もしバスがガードレールを破壊しその先に落ちたのなら俺もバスに追随し、同じ運命を辿っていたはず。
またバスが落ちることがなかったなら、俺の車はバスの後部に追突していたはずだ。
いよいよ頭が混乱しだした。
━そもそも、バスはどこに行ったんだ?
俺は首を傾げながらネジ曲がったガードレールの際まで歩くと、その真下の崖を覗き込んでみる。
視界の遥か先に入るのは真っ暗な林らしき影のシルエットと、さらにその向こうにうごめく鉛色の海。
よく見えないので俺は車のダッシュボードから懐中電灯を引っ張りだして持ってくると、照らしてみる。
だが確認できるのは鬱蒼として絡み合う木々だけで、バスの姿などどこにも見当たらなかった。
呆然としながらふと左側の法面辺りを見ると、そこに奇妙なものがあるのに気付く。
何だろう?と俺はそこを懐中電灯で照らし、ゾクリとした。
そこにはたくさんの花束やお菓子が地面に置かれている。
━かつてここで何があったと言うんだ?
訝しげに思っていた、正にその時だった。
ちぇっ、もう少しだったのにな
突然崖下の暗闇から聞こえた男の子の甲高い声。
そしてその声の後に続いたのは、さも楽しそうにケタケタ笑いあう男の子たちの声。
━誰かいるのか!?
思いながら俺はガードレールの際まで走り、懐中電灯で崖下を照らす。
そして一瞬で背筋が凍った。
その時に見た光景を俺は生涯忘れないだろう。
光の輪っかが浮き彫りにしているのは、崖下で複雑に絡み合う木々の枝。
面白かったです
古典的な怪談話で良いっすね〜
コメントありがとうございます。
━ねこじろう
こういう時には,念のために救急隊員にも下を覗いてもらった方が良い。
実は怪我人が「もう少しの辛抱だぞ」と励まし合っているのをパニックで「もう少しだったのに」と聞き間違ったり,見つけてもらった怪我人が安堵の笑みを浮かべたのを「不気味にニヤリと笑った」と見間違ったりすることが実際にあるから。