消えた観光バスの話
投稿者:ねこじろう (143)
俺がまだM子と付き合っていた頃の話なんだけど、その当時俺は大学生で彼女はOLしていて同じ歳だった。
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ある夏の休みの日、俺の小さなポンコツ軽で昼からドライブに出掛けた。
地元の海岸に行き日が暮れるまで二人浜辺で遊んでからじゃあそろそろ帰るか?と、また元来た道を走り出したんだ。
確か午後5時くらいだったかな。
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しばらく薄暗い田舎道を走った後、山あいに続く急な坂を登って行くとやがて、左手に山肌右手にガードレールの切り立つ崖に沿った片側1車線の道に変わった。
ガードレールのはるか彼方に見える、水平線に沈む真っ赤な太陽がとても印象的だったのを今も覚えている。
初めのうちは助手席に座るM子と下らないよもやま話をしていたんだけど、いつの間にか眠ってしまったのか彼女静かになってしまったんだ。
しょうがないからラジオでも聴きながら、単調で暗い山道を走り続けていた。
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それから何度目のカーブを過ぎた時だろう、突然すぐ前方にでっかいバスが現れたんだ。
サイズ的にも派手なデコレーションも、いかにも観光バスという体をしていたな。
バスのデカさのために前方が見えないほどだったよ。
そしてふとフロントガラス越しにバスの後部ウインドウを見ると、暗い車内に白い開襟シャツの男子学生数人が座る背中が確認できた。
部活の遠征か何かなのだろうか?
皆一様に日に焼けて体格も良いようだ。
やがて俺に気が付いたのか、数人が振り返り笑顔でふざけるように手を振りだす。
俺も応えるように微笑みながら手を振った。
するとその中の真ん中の一人が、今度は俺に向かって真剣な顔で「こっちに来いよ」という風に手招きしだした。
それに呼応するかのように、残りの数人も同じようにやりだす。
━なにバカやってんだろう
などと少々呆れながらその様を見ていた、まさにその直後だった。
面白かったです
古典的な怪談話で良いっすね〜
コメントありがとうございます。
━ねこじろう
こういう時には,念のために救急隊員にも下を覗いてもらった方が良い。
実は怪我人が「もう少しの辛抱だぞ」と励まし合っているのをパニックで「もう少しだったのに」と聞き間違ったり,見つけてもらった怪我人が安堵の笑みを浮かべたのを「不気味にニヤリと笑った」と見間違ったりすることが実際にあるから。