兼平さんはタクシーを使わない。
投稿者:とくのしん (65)
その事件の概要を聞きながら、兼平さんのタクシー嫌いにどんな接点があるのか私が考えていると、兼平さんが察したらしく私に言った。
「事件の担当記者だった私は、現場のキャンプ場付近に何度か赴いた。また、最後の目撃者とされるTに取材を申し込んだが断られてね。だけど本当に偶然だけど、たまたまキャンプ場に向かうときに摑まえたタクシーの運転手が、なんとTだったんだよ。
私は記者ということを隠して、それとなく事件について遠回しに聞いてみた。Tは当たり障りのないことを答えていたっけ。それで核心に迫るべく私は思い切って記者であることを明かし、話を聞いてみることにした。大きな通りで赤信号にひっかかったときに、私は記者であることを明かしたんだ。Tは大変驚いていたよ。一度私に振り返ったあと、絶句したように口を噤んでしまってね。そして私がAについて質問をしたときだった・・・。
ゴー!
ヨン!
サン!
ニー!
イチ!
いきなりTが大声で叫び出した。そしてゼロをカウントした瞬間、タクシーは急発進した。これは今でもはっきりと覚えている。信号がまだ赤だった。にも関わらず急発進させたんだ。座席に身体を押し付けられる程にね。それで横から来たトラックに突っ込む瞬間までは憶えているんだが・・・次にはっきりと記憶があるのは病院のベッドの上だったんだよ」
意識不明の状態が1週間程続き、奇跡的に一命を取り留めたという兼平さん。しかし、片足に麻痺が残ってしまった。一方のTは即死だったそうだ。
「そんなことがあったんですか。それじゃ、タクシーには乗ろうとは思わなくなりますよね・・・」
「いや、その事故もそうなんだけど・・・」
一呼吸置いて兼平さんは重い口を開いた。
「Tが死んだことで事件は迷宮入りしかけていた。私はTが死んだとはいえ、事件の真相を追うことは諦めていなかった。これでもジャーナリストの端くれだからさ。それで退院後、改めてその地を訪れたんだよ。そうして取材を続ける中で、タクシーを使う機会があってね。
Tと同じタクシー会社の人間だったんで、色々と事件について探りを入れてみたんだ。そのときのタクシーの運転手がまたお喋りなヤツでさ、色々と喋ってくれたんだよ。ベラベラとしゃべり続けるそいつが急に妙なことを言いだしてね・・・。
“お客さん、記者の人でしょ?事件のことをいつまでも追っていると、次は本当に死にますよ”
って。私がどういうことか尋ねると、運転手は同じ言葉を繰り返す。
そうして信号で止まったときだった。私がルームミラーに目をやると、運転手と不意に目があった。その瞬間、
ゴー!
ヨン!
サン!
ニー!
イチ!
と叫び出した。その瞬間、あの事故がフラッシュバックとなって思い出された。恐怖で身体が硬直して動かなくなっていたよ。本当に一瞬だったけど、一気に脂汗がぶわぁっと滲んでさ・・・そしたらカウントを終えた運転手が振り返って
“ギャハハハハハハハハハ!
何その宗教怖すぎる
富士山あたりは謎の宗教盛りだくさんですよw
今月もたくさんの投票ありがとうございました。11月をもってしばしお休みします。
復帰時期は未定ですが、11月の投稿作品も楽しんでいただければ幸いです。
、、、、、、、、、心臓が、、、、、、
し、、
、、、、、ぬ、、、、、