足音が向かった先
投稿者:有野優樹 (6)
短編
2024/09/08
23:34
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秋葉原のカフェに勤める女性、Iさんの体験談。
小学校一年生頃、一緒に寝ていた両親と離れ、ひとり部屋で眠ることになった日のこと。眠りつくまで喋ってくれていた母親の声が、今日から聞こえなくなる。心細いが一人で寝れるようにするための一歩だ。布団をかぶり目を瞑る。
“タッ、タッ、タッ”
部屋に近づいてくる足音。ひとりで眠ることを心配してくれて、両親のどちらかが来てくれたのかもしれない。
“タッ‥。タッ‥。タッ‥。”
しかし、足音は離れていく。扉が開いた音はしなかった。見に来てくれたわけではなかったのかと少し残念に思う。するとまた
“タッ、タッ、タッ”
“タッ‥タッ‥タッ‥”
部屋の前を行き来している。
すると、部屋の前で足音が止まった。
“キィ”
足元にある部屋の扉が開き、廊下の光が入ってくる。
「あ、やっぱり来てくれたのかな」
顔を見ようと上半身を起こしたとき、右から左に足首より下、色のない足がゆっくり歩いて行くのが見えた。
一人で眠るのが怖くなった。しかし、両親の部屋には戻らなかった。足が向かった先は両親の寝室だったから。
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