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不思議体験

とくのしんさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

心霊スポットに行った同級生の話
長編 2024/09/06 11:41 2,649view
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玄関から飛び出してとにかく全速力で来た道を戻った。家から門扉までは20~30mはあったそうなんですけど、雑草が伸び放題だから出口がなかなか見えてこない。それがもうとにかく怖くて怖くてたまらなかったそうで。後ろを振り返る余裕なんてないほどに走った。たかだ20~30mの距離だけど、やっとのことで入ってきたバリケートに辿り着く。バリケード伝いに隙間を見つけ、外に出ようとしたところでユウヤがついてきていないことに気づいた。振り返ると黒い人影にユウヤが囲まれそうになっていた。助けようにも恐ろしくて戻るなんて選択肢はなく、とりあえず自分だけ外に出た。

「ユウヤ!こっちこっち!」
叫んでもユウヤは一向にこっちにこない。こないというよりこれないと言った方が正しく、黒い無数の人影はユウヤを執拗に追い回していた。正確な人数はわからないが、15人前後はいたという。戻って助けるべきか、それとも助けを呼ぶべきかと焦っていたら
「坊主、どうした?」
見知らぬおじさんが声をかけてきた。友達が変な影に追われていると言ったところ、おじさんが敷地内を見た。どうやらおじさんには人影は見えなかったらしいが、ユウヤが錯乱しているように見えたらしく、血相変えたおじさんがバリケードを乗り越えてユウヤを助けに行ってくれた。暴れるユウヤを抱えて戻ってきたんだけど、ユウヤの様子が本当に只事じゃなかった。(ちなみにその黒い影たちは、バリケードのところまではついてきたとのこと)

「熱い!熱い!痛い!熱い!」
救出されたユウヤは、じたばたのたうち回っていて苦しそうにしていた。おじさんがすぐに救急車呼んでくれて病院に運ばれたんだけど、結論から言えばそのときは命に別状はなかった。熱い熱い!と叫んでいたが、火傷の類はなく転んでできた擦り傷だったり雑草で切った切り傷があった程度で、医者が言うにはパニックになってそう感じてしまったのだろうとの見解だった。
傷は大したことなかったんだけど、ユウヤにはそのときの記憶が全くなかったらしく、家に入ったあたりから何が起きたか覚えていなかった。その後は二人揃ってこっぴどく怒られたそうなんですけどね。

それから少し経ち、学校行事で林間学校に行くことになった。友哉とユウヤは同じ班だったので、終始行動を共にしていた。お決まりの飯盒でご飯炊いたり、カレー作ったり、キャンプファイヤーの前で踊ったり歌ったりしていた。そんなとき、ユウヤの様子がおかしいことに気づいた。ユウヤは、キャンプファイヤーを眺めながらぼーっとしている。あれ?どうかしたかな?って思って、別の友達と声をかけたそうなんです。そしたらユウヤが急に白目剥いて倒れた。近くにいた女子たちは一斉に悲鳴をあげて。先生たちに運ばれてバンガローで寝かされたんだけど、そのときも「熱い熱い」とずっとうわごとのように言っていたそうなんです。まぁそのときも少し休んだらユウヤも元通りになったんだけど、やっぱり記憶がなかったみたいで。なんで俺寝ているんだ?みたいに言ってたそうで。

「そんなこんなでさ。林間学校はなんとか無事終わったんだけど、ユウヤはそれから学校に来なくなったんだよ。学校に来なくなった理由っていうのがさ、ユウヤんち火事で全焼してさ。みんな亡くなったんだよ。林間学校の次の日にな」
そこにいたみんな固まりましたね。そんなことある?偶然にしちゃでき過ぎだろって。
友哉はマジだからと話を続けるんですけど、ユウヤが亡くなったことはクラスのみんなにも知らされた。いいヤツだったからみんな悲しんだし、友哉も親友無くしたことにかなり落ち込んだって言ってた。

それから2週間くらいして、ようやくユウヤがいない教室の雰囲気にも慣れてきたころ、学級新聞を作る係が林間学校の写真が出来たって持ってきた。みんなで写真をあれこれ眺め始めると、手にした写真にユウヤが写っていた。ちょうどカレーを作っているときの写真で、ユウヤが鍋を掻きまわしている様子が写っていた。ほんの少し前まで生きていたのになぁって、写真見ていた奴らも初めはキャッキャ騒いでいたけど段々しんみりしてきて。

そんな雰囲気になりかけたときに
「これ・・・なに?」
写真を見ていた一人が何かに気づいて声をあげた。ユウヤが写っている写真に黒い人影みたいなのが写り込んでいるという。確かにわかりにくいが、黒い人影が何枚にも写り込んでいた。心霊写真じゃね?と男子が騒いでいると

「これやべぇ!」
と誰かが大声をあげた。
そのヤバイ写真ていうのがさ、キャンプファイヤーを後ろにしたクラスの集合写真なんだけど、ユウヤの背後からまるでキャンプファイヤーの中に引っ張り込もうとするような無数の手がはっきりと写り込んでいた。
さらにもう一枚の写真は、ユウヤだけがまるで全身丸焦げになったように真っ黒に写っていたそうで。

「多分、写真撮ったときにはもう連れて行かれてたんじゃないかな」
話を締めくくる友哉がポツリと言った。
「だからさ、安易にそういうところ行くもんじゃないってわかっているから俺はパスする」
その話を聞いて、俺らももちろん心霊スポットに行こうなんて気は起きず解散することにした。後日、友哉に改めてその話について深堀したら、その心霊スポットは地元じゃ有名だったらしくて、友哉が高校のときにそこの学区のヤツがいて話を聞いたけど、金持ちが住んでいたとか外国人が住んでいたとか、どれも信憑性のない噂ばかりだったらしい。それで今は取り壊されたって言ってた。ただ、今もそこでは子供の影だったり、幽霊の目撃が絶えないらしい」
その話を聞き終えたとき、心霊スポットに行こうなんていうヤツは一人もいなくなっていた。そんなお話でした。

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コメント(3)
  • 今月の投稿作品「心霊スポットに行った親友の話」とは別の心霊スポット体験談になります。
    ずっと前に書き上げていたものですが、投稿するタイミングを逃してしまったので、供養的に投稿しました。

    とくのしん

    2024/09/06/11:43
  • まだ1ページ目ですが、友哉は読み方がユウヤとも読めるのでどことない違和感を覚えています。

    2024/09/09/15:37
  • 片や漢字で片やカタカナ表記にしたことで、読みづらくなってしまい申し訳ございません。
    次作以降で注意します。

    とくのしん

    2024/09/11/09:48

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