葬式ごっこ
投稿者:Mine (24)
弟は自分の意見を頑として曲げないようだった。明確に食い違う私と弟の主張。
私たちは袋小路にはまった。
この矛盾は一体どういう事?
マグカップを両手で包みながら私はしばし沈黙し考える。
おかしいというならこの葬式ごっこ自体がそもそもおかしい。
どうしてあんな遊びをしようと当時思ったのか全く意図が不明だ。
いくら暇を持て余していた子供とはいえ、自分の身内を遺体に見立てて読経するなんて、どう考えても普通じゃない。一度二度だけなら分かるが、何度も何度も飽きもせずまるで何かに魅入られたように。
第一、なぜ私と弟のこの体験の矛盾に今になって気付いたんだろう。
当時は不思議に思わなかったのだろうか?
考えれば考えるほど謎は深まっていくばかり。
もしも、私と弟がどちらも嘘をついてなく真実を語っていて、そしてこの状況に無理矢理にでも説明をつけるとしたら要するに…
私は弟の姿をした”何か”の前で遺体の真似をしていつもお経を聞かされていた。
弟は私の姿をした”何か”の前で遺体の真似をしていつもお経を聞かされていた。
この答えをひねり出した私は血の気が引いた。
いつの間にか得体の知れない何かと遊んでいた私達。
弟の方も同じ結論に達したらしく、お互い青ざめた顔でなんの音も立てずに口を閉ざしていた。
他に何か腑に落ちる説明がないか必死で頭を働かせるも何も思いつかない。
テーブルに肘をつき俯いて両手で頭を抱えていた弟がややあっておもむろに口を開く。
「もう止めようぜ。この事について深く考えたらヤバいと思う」
「・・・うん。もうよそう、この話は」
そう答えたところで私はどうしても気になることに思い至る。
これだけは、弟に確認しておきたい。
「ねぇ、最後に一つだけ」
「もういいってまじで」
「お願い、これが最後だから。・・・あの頃葬式ごっこしている最中・・・どうだった?」
「・・・姉ちゃんはどうなんだよ」
私はしばらく逡巡し、正直に打ち明けた。
「すごく心地良くて、このまま全部終わりでいいや、って…」
「…だよな」
食い違うこともなくお互いに共通していたのは、この感情だけ。
そういえば「サキュバスやインキュバスは家族に化けて現れ、被害者と強制的に性交する」という話が有るね。
それが何を意味しているのかを考えると闇が深い。