マンション管理人の恐怖体験

「村井さん、男の子に話しかけたといいますが、そんな子供はどこにも映っていませんでした。村井さん、何があったか教えてください」

それを聞いて村井さんは驚愕したものの、自身も半信半疑な様子で語った内容が以上のとおりである。

大けがを負ったものの、村井さんは職場へ復帰する意欲を強く見せていた。会社としても大変な事故に遭ってしまったものの、その人柄や仕事ぶりから復帰を心待ちにしていた。住人からも管理人の村井さんを心配する声は多かった。村井さんは職場復帰に向けて、リハビリを開始した矢先、病院の屋上から飛び降りた。

「やっと松葉杖を使って歩けるようになったという人がですよ、屋上のフェンスをよじ登って飛び降りたなんて考えられますか？」

語気を強め、私に問いかけてきた野口さん。確かににわかには信じがたい話である。

「村井さんが亡くなったあとからですよ、例のマンションで飛び降り自殺が起き始めました。決まって6階からなんです。村井さんが事故に遭うまでは、一度も飛び降りなんて起きたことのないマンションだったんですよ、本当に」

現在進行形で、そのマンションでは飛び降りが続いているという、そんな話である。